~その契約書にハンコを押す前に。プロが教える「地雷業者」回避の全知識~
「高いお金を払ったのに、イメージと全然違うサイトが出来上がった」
「公開した後、ちょっとした修正を頼んだら高額な追加費用を請求された」
「担当者と連絡がつかなくなり、サイトが放置状態になっている」
ホームページ制作の現場において、このような「失敗談」は後を絶ちません。
私の元にも、「前の制作会社とうまくいかなくて…」という駆け込み相談が毎月のように寄せられます。
そのたびに私は思います。
「最初の『パートナー選び』さえ間違っていなければ、このお客様は数百万円も無駄にせずに済んだのに」と。
ホームページ制作は、家電を買うのとはわけが違います。
一度契約すると、制作期間の3ヶ月、そして公開後の運用を含めれば数年単位でのお付き合いになる、いわば「結婚」のようなものです。
結婚相手を「顔がタイプだから(デザインが良いから)」や「年収が高いから(大手だから)」という理由だけで選ぶと、性格の不一致で苦労しますよね。
Web制作も全く同じです。
- 御社のビジネスを理解してくれるか?
- 困った時に助けてくれるか?
- お金の価値観(費用対効果)は合うか?
これらを見極めずに契約することは、目隠しをして綱渡りをするようなものです。
この記事では、数多くの炎上プロジェクトを火消しし、成功に導いてきた私が、「絶対に失敗しないための制作会社選びチェックリスト10」を公開します。
経営者であるあなたが、相手の実力を裸にするための「質問リスト」として活用してください。
この10項目をクリアした会社なら、間違いなく御社のビジネスを加速させる最強のパートナーになるはずです。
1. なぜ、制作会社選びはこんなにも難しいのか?
チェックリストに入る前に、失敗の根本原因を知っておきましょう。
最大の原因は、「情報の非対称性」にあります。
- 制作会社: Webの知識がある。相場を知っている。
- 発注者(あなた): Webの知識がない。相場が分からない。
この知識格差があるため、悪質な業者は「これはWebの常識ですよ」と言って、不利な条件を飲ませようとします。また、実力のない業者は専門用語を並べて「凄そう」に見せかけます。
これから紹介するチェックリストは、この「知識の格差」を埋め、対等な立場で交渉するための武器です。
2. 【基本・実績編】その会社に「実力」はあるか?
まずは、相手の基礎能力を見極めるためのチェック項目です。HPの実績ページを見るだけでは分からない「真実」を探ります。
チェックリスト①:同業種、または「似た課題」の解決実績はあるか?
「おしゃれなサイトを作った実績」はあてになりません。
重要なのは、「御社の業界のルールや、顧客心理を理解しているか」です。
- 質問例: 「過去に、弊社と同業種(または似たターゲット)の制作実績はありますか? その際、どのような課題を解決しましたか?」
もし飲食店の実績しかない会社に、BtoBの製造業サイトを頼むのはリスクが高いです。業界特有の商習慣を説明するだけで膨大な時間がかかってしまうからです。
チェックリスト②:デザインだけでなく「数字」の実績を語れるか?
「かっこいいサイトを作りました」ではなく、「問い合わせを2倍にしました」という実績があるか。
- 質問例: 「御社が手がけたサイトで、最も成果が出た(売上が上がった)事例を教えてください。なぜうまくいったのですか?」
この質問に対し、「デザインを今風にしたからです」としか答えられない会社は、「見た目を作るだけの会社(アート屋)」です。「ターゲットを絞り込み、導線を改善したからです」と論理的に答えられる会社を選びましょう。
チェックリスト③:担当者は「御社のビジネス」に興味を持っているか?
商談中、担当者はメモを取っていますか?
そして、その質問内容は「デザインの好み」ばかりではありませんか?
- チェックポイント: 「なぜ今のビジネスを始めたのですか?」「一番の売りは何ですか?」「競合他社に負けない点は?」
こうした「ビジネスの根幹」を聞いてこない担当者は、御社のサイトを「ただの作業」として処理しようとしています。熱量のない担当者に、良いサイトは作れません。
3. 【提案・見積もり編】その内容は「誠実」か?
次に見積もりと提案書の内容を精査します。ここが一番「騙されやすい」ポイントです。
チェックリスト④:「一式」見積もりに逃げていないか?
見積書に「Webサイト制作一式:100万円」としか書かれていない。
これは危険信号です。何が含まれていて、何が含まれていないかが不明瞭だからです。
- チェックポイント: * ディレクション費(進行管理)
- デザイン費
- コーディング費(プログラム)
- スマホ対応費
- 原稿作成費 / 撮影費
最低でもこれくらいの内訳が出ているか確認してください。「詳細を出してください」と言って渋る会社は、やましいことがある証拠です。
チェックリスト⑤:スマホ対応(レスポンシブ)は「標準」か?
今どき「スマホ対応はオプションで別料金です」という会社は、技術力が5年前で止まっています。
- チェックポイント: スマホ対応(レスポンシブデザイン)が標準仕様になっているか。また、「スマホファースト(スマホでの見やすさを最優先)」で設計してくれるか。
チェックリスト⑥:SEO(集客)の具体的な策があるか?
「SEO対策もしておきますね」という口約束ほど信用できないものはありません。
SEOは「タグを入れて終わり」の魔法ではないからです。
- 質問例: 「具体的に、どのようなキーワードでの上位表示を狙いますか? そのためのサイト設計はどうなっていますか?」
「社名で検索すれば出ますよ」と答える会社は論外です(社名で出るのは当たり前です)。「『地域名+業種』で狙うために、こういうページを作りましょう」と提案できる会社が本物です。
4. 【契約・運用編】その契約は「足かせ」にならないか?
最後に、トラブルになりやすい「権利」と「運用」の話です。ここを見落とすと、後で身動きが取れなくなります。
チェックリスト⑦:ドメインとサーバーの「名義」は誰か?
これは最重要項目です。
制作会社名義で契約されていると、解約時に「ドメインは返しません(サイトは消滅します)」と言われるリスクがあります。Web上の住所(ドメイン)を人質に取られるのと同じです。
- チェックポイント: ドメインとサーバーの契約名義は「自社(御社)」になっているか。管理を代行してもらう場合でも、権利者は御社であるべきです。
チェックリスト⑧:更新システム(CMS)は汎用的なものか?
「弊社オリジナルの更新システムを使います!」
一見すごそうですが、これは「ロックイン(囲い込み)」の罠かもしれません。その会社と契約を切ったら、システムが使えなくなるからです。
- チェックポイント: 世界標準の「WordPress(ワードプレス)」などで作られているか。WordPressなら、もし制作会社が倒産しても、他の会社に引き継ぐことができます。
チェックリスト⑨:修正回数と追加費用のラインは明確か?
「修正は何度でも無料だと思っていたら、3回目から請求が来た」
こうした認識のズレを防ぎましょう。
- チェックポイント: * デザインの修正は何回まで無料か?
- 公開後のテキスト修正は、月額費用に含まれるか?
- どの作業からが「追加見積もり」になるのか?
チェックリスト⑩:契約期間の縛り(リース契約)はないか?
「初期費用0円、月額3万円の5年契約(リース)」
これはWeb制作において「最大の地雷」です。
5年という長い期間、解約できず、総額では相場の倍以上を支払うことになります。しかも、解約したらサイトは手元に残りません。
- チェックポイント: 契約期間は何年か? 中途解約の違約金はあるか? リース契約になっていないか?(Web制作でリースを組むのは基本的にNGです)
5. もし「怪しい」と思ったら? 断り方のマナー
チェックリストを確認して、「この会社は合わないな」と思ったら、遠慮なく断ってOKです。
相見積もりはビジネスの常識です。
スマートな断り方:
「社内で検討した結果、今回は弊社の業界実績が豊富な別の会社にお願いすることになりました。ご提案いただきありがとうございました」
理由を正直に伝える必要はありませんが、曖昧にして待たせるよりも、早めに断る方がお互いのためです。
6. まとめ:良いパートナー選びが、成功の9割を決める
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
10個のチェックリスト、いかがでしたでしょうか?
「注文が多い客だと思われないかな?」と不安になる必要はありません。
むしろ、まともな制作会社であれば、「これだけしっかり考えているお客様なら、我々も本気で提案しなければ」と身を引き締めます。
逆に、これらの質問をして嫌な顔をする会社や、答えをはぐらかす会社は、その時点で候補から外して正解です。それは、将来起こるトラブルを未然に防げたことを意味します。
ホームページ制作は、御社のビジネスを次のステージへ引き上げるための「投資」です。
その大切な投資を預けるパートナー選びに、妥協は禁物です。
このチェックリストを片手に、制作会社の担当者とじっくり話をしてみてください。
そして、「この人なら信頼できる」「一緒にビジネスを伸ばしていけそうだ」と心から思える相手を見つけてください。
御社にとって最高の一社と巡り合い、素晴らしいWebサイトが完成することを、心より応援しております。
【編集後記】
余談ですが、私が制作会社側の立場として一番嬉しいのは、お客様から「どう思いますか?」と意見を求められた時です。
「言われた通りに作る」のではなく、「一緒に考える」。そんな関係性が築けたプロジェクトは、必ずと言っていいほど成功します。
ぜひ、対等なパートナーシップを築いて欲しいですね。

