~自己満足の「アート作品」を作るな。利益を生む「ビジネスツール」を作れ~
「せっかく100万円以上かけてリニューアルしたのに、問い合わせが増えないどころか減ってしまった…」
「デザインは凄くかっこよくなった。社員の評判もいい。でも、誰も見てくれていない気がする」
もしあなたが今、リニューアルを検討中で、制作会社に対して「とにかく今の流行りを取り入れて、おしゃれでかっこいいサイトにしてください」とオーダーしようとしているなら。
あるいは、すでにリニューアルを終えて冒頭のような悩みを抱えているなら。
この記事は、あなたのビジネスを救うための「警告書」であり、「処方箋」です。
はっきり申し上げます。
「見た目だけ」を変えるリニューアルは、経営における自殺行為です。
私はこれまで、数多くのWebサイトを見てきましたが、デザインを一新して失敗する企業には共通点があります。それは、Webサイトを「会社の飾り(パンフレット)」だと思っていることです。
Webサイトの本質は「飾り」ではありません。24時間365日、文句も言わずに働き続け、見込み客を連れてくる「機能を持った集客装置」であるべきです。
装置である以上、重要なのは「塗装(見た目)」よりも「エンジン(機能)」や「設計図(導線)」です。ここを無視して外見だけを整えても、それは「中身のない綺麗な箱」を作っているに過ぎません。
この記事では、なぜ多くの経営者が「見た目」に騙されてしまうのか、そして本当に成果を出すために必要な「機能性」と「集客導線」とは具体的に何なのかを、専門用語を使わずに徹底解説します。
大切なお金をドブに捨てず、確実に回収できる「投資」にするために。
デザインカタログを閉じて、まずはこの記事に目を通してください。
1. なぜ「おしゃれなサイト」ほど集客に失敗するのか?
「おしゃれであれば、お客様は信頼してくれるはずだ」
この思い込みが、そもそもの間違いの始まりです。
1-1. 「綺麗な廃墟」問題
想像してみてください。
人里離れた山奥に、世界的建築家が建てた、ガラス張りの超おしゃれなレストランがあるとします。
外観は最高です。しかし、そこへ行く地図(SEO)はなく、入り口のドアノブがどこにあるか分からず(ユーザビリティの欠如)、メニューは英語のみで読めない(コンテンツの不備)。
果たして、この店は繁盛するでしょうか? しませんよね。
Web上には、このような「綺麗な廃墟」が溢れかえっています。
デザインに凝りすぎて表示速度が遅い、文字が小さくて読めない、メニューが英語でおしゃれすぎて意味が分からない。
これらは全て、「お客様(ユーザー)の使いやすさ」よりも「発注者(社長)の好み」を優先した結果です。
1-2. デザインの本来の意味とは?
「Design(デザイン)」という言葉の語源をご存知でしょうか?
単なる「装飾」という意味ではありません。本来は「課題解決のための設計」という意味です。
- 文字が読みやすいこと。
- ボタンが押しやすいこと。
- 欲しい情報がすぐ見つかること。
これらを実現することこそが、Webにおける「優れたデザイン」です。
「かっこいい」と「使いやすい」は別物であり、ビジネスで優先すべきは圧倒的に後者です。
2. 成果を左右する「機能性」の3大要素
では、見た目以上にこだわるべき「機能性」とは何でしょうか。
最低限、この3つが揃っていないサイトは、スタートラインにすら立てていません。
要素①:スマホファースト(レスポンシブ対応)
「うちはBtoBだからPC閲覧がメイン」というのは、もはや古い常識です。
決裁権を持つ社長も、現場の担当者も、移動中や隙間時間にスマホで情報収集をします。
- 指で拡大しなくても文字が読めるか?
- 親指の届く範囲に重要なボタンがあるか?
- タップしやすい大きさか?
PC画面での美しさよりも、「スマホの小さな画面での快適さ」を最優先に設計する必要があります。
要素②:表示速度(スピード)
おしゃれな高画質画像や、派手なアニメーション動画をトップページに使いたい気持ちは分かります。
しかし、それによって読み込みに「3秒以上」かかったら、ユーザーの約半数はその時点で「戻る」ボタンを押して離脱します。
Webの世界において、「重い」は「悪」です。
どれだけ美しい映像も、見てもらえなければ存在しないのと同じ。表示速度を犠牲にする演出は、百害あって一利なしです。
要素③:更新性(CMS導入)
「お知らせを1つ載せるのに、制作会社へメールして、見積もりをとって、数日待つ…」
このタイムラグは、ビジネスチャンスの喪失です。
自分たちでブログやお知らせを簡単に更新できるシステム(WordPressなど)が入っているか。
「情報は鮮度が命」です。自社で即座に情報を発信できる機能性は、企業の信頼感に直結します。
3. お客様をゴールへ導く「集客導線」の設計図
機能的な土台ができたら、次はお客様をスムーズに「お問い合わせ」や「購入」へと案内する道筋(導線)を作ります。
ここが抜けていると、アクセスはあるのに売上が上がらない「ザルサイト」になります。
3-1. ユーザーは迷子になりやすい
初めて御社のサイトに来たお客様は、巨大なショッピングモールに放り出された迷子のようなものです。
「どこに行けば悩みが解決するのか?」を、手取り足取り教えてあげる必要があります。
- 悪い例: メニューバーに「会社概要」「事業内容」「代表挨拶」などが並列に並んでいて、どれを見ればいいか分からない。
- 良い例: トップページに「〇〇でお悩みの方はこちら」という大きな看板(バナー)があり、解決ページへ直行できる。
3-2. 全ページに「出口(CTA)」を用意する
CTA(Call To Action)とは、「行動喚起」のことです。具体的には「お問い合わせボタン」や「資料請求ボタン」です。
多くのサイトが、ページの一番下にひっそりと「お問い合わせ」リンクを置いています。これでは不十分です。
お客様が「いいな」と思ったその瞬間にボタンがなければ、熱は冷めてしまいます。
- 画面をスクロールしても追従してくる「固定フッターボタン」。
- 記事の途中や見出しの終わりに配置する「相談ボタン」。
「いつでも、どこからでも連絡できる状態」を作ることが、鉄則中の鉄則です。
3-3. フォームでの離脱を防ぐ(EFO)
せっかく「問い合わせよう」と決心してフォームを開いたのに、
「住所の入力が必須」「フリガナが必須」「アンケート項目が多い」
これを見た瞬間、お客様は「面倒くさい!」と感じてページを閉じます。
入力項目は極限まで減らすこと。
名前とメールアドレス(または電話番号)と相談内容。これだけで十分なはずです。
ここを最適化するだけで、問い合わせ数が2倍になることも珍しくありません。
4. 失敗しないリニューアルの進め方【実践編】
これらを踏まえて、実際に制作会社へ依頼する際、どのように進めればよいのでしょうか。
ステップ①:デザインの話は「最後」にする
打ち合わせの冒頭で、「こんな色がいい」「こんな雰囲気がいい」と言わないでください。
まずは「目的」と「課題」を伝えます。
「現状、スマホからの問い合わせが少ないのが課題です」
「リニューアル後は、資料請求の数を月10件にしたいです」
この目的に対して、どういう機能と導線が必要かを議論するのが先決です。デザインは、それを実現するための「手段」として後から決まります。
ステップ②:ワイヤーフレーム(設計図)に時間をかける
デザイン(色付け)に入る前の、白黒の構成案(ワイヤーフレーム)の段階が勝負です。
ここで、
「お客様はこのボタンを見て、次にどんな不安を感じるか?」
「この位置にこの情報がないと、離脱するのではないか?」
と、徹底的にユーザー心理をシミュレーションしてください。
ここでOKを出したら、もう後戻りはできません。デザイン確認よりも、設計図確認に全精力を注いでください。
ステップ③:データに基づいて改善する前提を持つ
どんなに完璧に設計しても、公開してみないと本当の正解は分かりません。
「作って終わり」ではなく、公開後にアクセス解析を見て、
「思ったよりこのボタンが押されていないから、色を変えてみよう」
「このページの滞在時間が短いから、文章を変えてみよう」
と、微調整を繰り返せる体制(保守契約など)を作っておくことが、長期的な成功の鍵です。
5. まとめ:Webサイトは「美しさ」ではなく「数字」で語れ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
経営者であるあなたにお願いがあります。
リニューアルされた新しいサイトのデザイン案が上がってきた時、
「かっこいいね!」「おしゃれだね!」
という感想だけで承認印を押さないでください。
代わりに、こう問いかけてください。
「このデザインは、お客様にとって使いやすいのか?」
「このボタン配置で、本当に迷わず問い合わせできるのか?」
見た目の美しさは、時間とともに飽きられますし、時代とともに古くなります。
しかし、「使いやすさ(機能性)」と「人を動かす設計(導線)」は、時代を超えて御社の利益を生み続ける資産になります。
自己満足のアート作品ではなく、泥臭くても確実に数字を作る「ビジネスツール」を手に入れてください。
そのためには、デザインの魔法に惑わされず、その裏側にある「機能」と「導線」に目を光らせる、経営者としての眼力が必要です。
あなたが本質を見抜くことで、御社のWebサイトが「見た目倒し」ではなく、「中身の詰まった最強の営業マン」へと生まれ変わることを、心より応援しております。
【編集後記】
余談ですが、Amazonのサイトはお世辞にも「おしゃれで感動的」とは言えませんよね。でも、誰もが迷わず商品を探せて、気づけば購入ボタンを押しています。あれこそが、世界最強の「機能美」であり「導線設計」です。
目指すべきは美術館ではなく、あのAmazonのような「使いやすさ」なのです。
良いリニューアルになることを祈っています!

