「ずっと温めてきたアイデアを、ついに形にする時が来た」
「脱サラして、自分のお店を持つ夢を叶えたい」
起業や開業は、人生における最大の挑戦であり、希望に満ちたスタートラインです。
しかし、その高揚感のすぐ裏側には、常に冷ややかな現実が張り付いています。
それは、「資金(お金)」の不安です。
「店舗の内装費が、思ったより高くついた…」
「広告を出したいけれど、予算がもう残っていない…」
「最初の数ヶ月、売上が立つまでの運転資金は足りるだろうか…」
創業期は、息をするだけでお金が出ていく時期です。
「もっと資金があれば、あれもできたのに」と歯痒い思いをする経営者様は、決して少なくありません。
そんな、孤独な戦いを始める「あなた」に、ぜひ知っていただきたいことがあります。
それは、「創業期の挑戦を、国や自治体が『お金』で応援してくれる制度がある」という事実です。
それが、「補助金(ほじょきん)」と「助成金(じょせいきん)」です。
「実績のない創業したての会社でも、本当にもらえるの?」
「借金(融資)とは何が違うの?」
結論から言えば、創業期こそ、これらの制度を使う最大のチャンスです。
返済不要の資金を得ることで、リスクを抑えながら、ライバルよりも早く、強く、ロケットスタートを切ることができます。
この記事は、これから起業する、あるいは開業したばかりの個人事業主・中小企業経営者様に向けた、「起業・開業時に使える補助金・助成金の完全まとめ」です。
この記事を読めば、「どの制度が自分に合っているか」が分かり、「資金の不安」を「未来への投資」に変えるための具体的な地図が手に入ります。
第1章:はじめに|創業期こそ「もらえるお金」を知るべき理由
なぜ、多くの先輩経営者が口を揃えて「補助金は使った方がいい」と言うのでしょうか。
それは、単に「お金がもらえるから」だけではありません。
理由①:返済不要!「融資」にはない最強のメリット
創業時の資金調達といえば、日本政策金融公庫などからの「創業融資」が一般的です。しかし、融資はあくまで「借金」。いつかは利息をつけて返さなければなりません。
一方、補助金・助成金は、原則として「返済不要」です。
例えば「200万円」の補助金をもらえば、それはそのまま「会社の純利益」が200万円増えたのと同じ効果を持ちます。創業期の財務体質を一気に強化できるのです。
理由②:実績がなくても「計画」で勝負できる
「ウチはまだ売上がないから、信用がない…」
そう思うかもしれません。しかし、補助金審査で最も重視されるのは「過去の実績」ではなく、「これからの事業計画(未来)」です。
「このビジネスは、これだけ世の中の役に立ち、成長します!」
その熱意とロジックさえあれば、創業1ヶ月目の個人事業主でも、数百万、数千万円の資金を獲得することは十分に可能です。
理由③:事業計画書を作ることで「成功確率」が上がる
申請のためには、「誰に」「何を」「どうやって売るか」を突き詰めた「事業計画書」を作る必要があります。
このプロセスを経ることで、頭の中のフワフワしたアイデアが、実現可能なビジネスモデルへと磨き上げられます。
補助金は「お金」だけでなく、「経営者としての視点」も与えてくれるのです。
第2章:まずは整理!「補助金」と「助成金」の違い
本題に入る前に、基本中の基本を押さえておきましょう。
創業期のあなたが狙うべきは、どちらでしょうか?
1. 補助金(経済産業省系)=「コンテスト」
- 目的: 事業を成長させるための「攻めの投資」を支援
- 対象: 「モノ・カネ」(店舗改装、HP制作、チラシ、機械購入など)
- 特徴: 審査があります。 優れた計画書を出した人だけが選ばれる「コンテスト形式」です。落ちることもあります。
- 創業期のおすすめ: 「小規模事業者持続化補助金」など
2. 助成金(厚生労働省系)=「ミッション」
- 目的: 雇用環境を整える「守りの投資」を支援
- 対象: 「ヒト」(採用、正社員化、研修など)
- 特徴: 審査(競争)はありません。 要件を満たせば、原則全員もらえます。ただし、人を雇わない場合は使えません。
- 創業期のおすすめ: 「キャリアアップ助成金」など
【結論】
従業員を雇わず、一人でスタートするなら「補助金」一択です。
最初からスタッフを雇うなら「助成金」も併用しましょう。
第3章:【全業種OK】起業・開業時に絶対チェックすべき「3大補助金」
まずは、業種を問わず、多くの創業者が活用している「王道」の補助金を紹介します。
これらは国の制度なので、全国どこで開業しても対象になります。
① 小規模事業者持続化補助金(創業者の味方!)
- どんな制度?「小さなお店や会社」が、「新しいお客さんを集める(販路開拓)」ための費用を補助してくれる制度です。
- 補助額(目安)通常枠:最大50万円 / 創業枠(※):最大200万円(※特定創業支援等事業の支援を受けた場合など、創業者は優遇されます!)
- 何に使える?(対象経費)
- 広報費: ホームページ制作、チラシ・パンフレット作成、Web広告、看板設置
- 店舗改装費: お店の内装工事、陳列棚の設置
- 開発費: 新商品のパッケージデザイン、試作品開発
- ここがポイント!「創業したてで、知名度がない」という悩みを解決するのに最適です。特に**「創業枠」**を使えば、補助上限が200万円まで跳ね上がります。これを使わない手はありません。
② IT導入補助金
- どんな制度?「業務を効率化するため」のITツール(ソフトやアプリ)の導入費用を補助してくれる制度です。
- 補助額(目安)数万円 〜 350万円以上(※導入するツールや枠による)
- 何に使える?(対象経費)
- 会計ソフト: freee、マネーフォワードなど(インボイス対応)
- 決済システム: POSレジ、モバイルオーダーシステム
- ECサイト: ネットショップの構築費用
- PC・タブレット: (※条件付きで対象になる枠があります)
- ここがポイント!創業期は、経理や顧客管理などの「事務作業」に忙殺されがちです。最初からITツールを入れて効率化しておけば、社長は「売上を作ること」に集中できます。PCやレジの購入費が出る可能性があるのも魅力です。
③ ものづくり補助金
- どんな制度?「革新的な新商品・新サービス」を開発するための、大型の設備投資を支援する制度です。
- 補助額(目安)100万円 〜 1,000万円以上
- 何に使える?(対象経費)
- 特殊な機械装置の導入
- 大規模なシステム開発
- 試作開発のための原材料費
- ここがポイント!「ものづくり」という名前ですが、サービス業や小売業でも「今までにない新しいサービス」なら対象になります。ハードルは高いですが、初期投資が巨額になるビジネスモデル(工場、テック系など)の場合は、検討する価値大です。
第4章:【地域限定】知る人ぞ知る「創業助成金(創業支援)」
国の補助金とは別に、実は「あなたが住んでいる街(自治体)」が、独自に創業者を応援しているケースが非常に多いです。
これを探せるかどうかが、勝負の分かれ目になります。
① 東京都「創業助成金」
(※東京都で開業する場合の例です。他の道府県にも類似の制度があります)
- 特徴:東京都内で創業する人に対し、賃借料、広告費、従業員人件費などを最大300万円(※年度により変動)助成する制度。
- すごいところ:国の補助金では対象外になりがちな「家賃」や「人件費(従業員)」まで対象になるケースがあります。これは非常に大きいです。
② 各市区町村の「特定創業支援等事業」
これは「お金がもらえる」制度ではありませんが、「補助金を有利にする」ためのチケットです。
- 仕組み:市区町村が主催する「創業セミナー」や「個別相談」を一定期間受けると、証明書がもらえます。
- メリット:
- 会社設立時の「登録免許税」が半額になる。(株式会社なら15万円→7.5万円)
- 日本政策金融公庫の「創業融資」の金利や要件が優遇される。
- 前述の「小規模事業者持続化補助金」の上限が200万円にアップする。
【アドバイス】
開業する地域の「商工会議所」や「役所の産業振興課」に、
「特定創業支援(とくていそうぎょうしえん)のセミナーはやってますか?」
と電話してみてください。これを受けるだけで、数十万円以上のメリットがあります。
第5章:【人を雇うなら】開業時から使える「雇用の助成金」
「最初からスタッフを雇ってスタートする」
そんな経営者様は、厚生労働省の助成金を使わないと損です。
① キャリアアップ助成金(正社員化コース)
- 概要:雇い入れたパート・アルバイト等を、6ヶ月後に「正社員」に転換すると、1人あたり57万円がもらえる制度。
- 創業期の活用法:最初は様子見で「有期契約(契約社員・パート)」として採用し、半年後に「よし、このまま頑張ってくれ!」と正社員にする。これだけで、採用コストや教育コストを助成金でカバーできます。
② トライアル雇用助成金
- 概要:ハローワークの紹介で、経験の浅い人などを「試用期間(トライアル)」として3ヶ月雇うと、月額最大4万円(合計12万円)がもらえる制度。
- 創業期の活用法:「本当に戦力になるか不安」という場合に、お試し期間中の人件費を補助してもらえます。
第6章:【要注意】創業者が陥りやすい「資金繰りの落とし穴」
ここまで「もらえる話」をしてきましたが、絶対に伝えておかなければならない「リスク」があります。
これを知らずに申請すると、最悪の場合、「黒字倒産」します。
落とし穴①:補助金はすべて「後払い」である
「補助金で200万円もらえるから、手持ちの資金がなくても店舗改装できる!」
→ これは大きな間違いです。
補助金の流れはこうです。
- 申請して「合格(採択)」する。
- まず、あなたが全額(改装費など)を業者に支払う。
- 「支払いました」という証拠を国に提出する。
- 審査を経て、数ヶ月後に補助金が入金される。
つまり、「一時的に全額を立て替える現金(キャッシュ)」が絶対に必要です。
創業期は現金が命です。補助金を当てにしすぎて、手元の現金を使い果たさないようにしてください。
落とし穴②:申請から入金まで「1年」かかることも
申請準備に1〜2ヶ月、審査に2〜3ヶ月、事業実施に半年、入金審査に2ヶ月……。
トータルで、申請しようと思ってからお金が入るまで1年近くかかることもザラです。
「来月の支払いに使いたい」という資金繰りには、補助金は使えません。
(※その場合は、公庫などの「創業融資」を使ってください)
落とし穴③:事業計画書を書く「手間」
創業準備で忙しい中、慣れない書類作成に時間を取られます。
「自分でやる」か「専門家(行政書士など)に報酬を払って頼む」か。
自分の時給と天秤にかけて判断する必要があります。
第7章:まとめ|あなたの「第一歩」はここから
起業・開業時に使える補助金・助成金について解説しました。
- 販路開拓なら → 小規模事業者持続化補助金(創業枠)
- IT・効率化なら → IT導入補助金
- 設備投資なら → ものづくり補助金
- 人を雇うなら → キャリアアップ助成金
- まずは地域で → 自治体の創業支援・特定創業支援等事業
これらは、国が用意してくれた「創業者のためのスターターキット」のようなものです。
使わない手はありません。
あなたが今日やるべき「アクション」
この記事を読み終えたら、まず最初にやるべきことは2つです。
- 「GビズID(プライム)」を取得する。(※すべての補助金申請に必要なIDです。発行に2週間かかるので、今すぐ無料で申請してください)
- 「J-Net21」で、自分の地域の創業支援を検索する。(※「〇〇市 創業 補助金」で検索してみてください)
起業は、不安との戦いです。
でも、あなたは一人ではありません。
国や自治体の支援制度を賢く使いこなし、資金の不安を払拭して、最高のスタートダッシュを切ってください。
あなたの新しいビジネスが、多くの人に愛され、大きく花開くことを心から応援しています。

