「ホームページを作りたいけど、何から始めればいいか分からない」
「デザイン会社に頼めば、いい感じに作ってくれるだろう」
「とりあえず、競合他社と同じような内容を載せておけば安心だ」
もし、貴社が今、このように考えてホームページ制作をスタートさせようとしているなら、そのプロジェクトは「失敗」する確率が極めて高いと言わざるをえません。
こんにちは。私はこれまで、数多くの個人事業主様や中小企業様のWeb戦略を支援し、「売れるサイト」と「売れないサイト」の境界線を目の当たりにしてきました。
何十万円、時には何百万円もの投資をして作るホームページ。
成功するサイトと、誰にも見られずに放置されるサイト。その決定的な違いは、デザインの美しさでも、機能の多さでもありません。
それは、制作に入る前の「コンセプト設計」がなされているか否か、ただその一点に尽きます。
家を建てる時、図面(設計図)なしにいきなり木材を切り始める大工はいません。
しかし、Webサイト制作の世界では、この「設計図(コンセプト)」がないまま、いきなり「デザイン(見た目)」から入ってしまうケースが後を絶たないのです。
この記事では、Web制作のプロでもある私が、「ターゲットに刺さり、成果を生み出すWebサイト」を作るために、一番最初に決めるべき「コンセプト設計」の極意を徹底解説します。
専門用語は使いません。これはWebの話ではなく、貴社のビジネスを再定義する「経営戦略」のお話です。
1. なぜ「コンセプト」がないと、Webサイトはゴミになるのか?
まず、コンセプトの重要性を理解するために、コンセプトがないサイトが陥る「3つの悲劇」をご紹介します。
悲劇1:誰にも刺さらない「空気のようなサイト」になる
「幅広いお客様に来てほしいから、ターゲットは絞りたくない」
多くの経営者様がこうおっしゃいます。しかし、これはWeb集客において自殺行為です。
「すべての人」に向けたメッセージは、「誰の心にも響かない」メッセージになります。
- ×「どなたでも歓迎の美容室」
- ○「くせ毛に悩む40代女性のための、髪質改善専門美容室」
どちらが、悩みを持つ人の目に留まるでしょうか? 答えは明白です。
コンセプト(誰に、何を届けるか)が曖昧だと、貴社のサイトはインターネットという広大な海の中で、誰にも気づかれない「空気」になってしまいます。
悲劇2:制作会社とのトラブルの原因になる
コンセプトが決まっていない状態で制作会社に発注すると、どうなるでしょうか?
貴社は「なんとなくカッコいい感じ」と伝え、制作会社は「流行りのデザイン」を作ります。
しかし、納品直前になって「やっぱりなんか違う」「もっと温かみが欲しい」と感覚的な修正を繰り返し、追加費用が発生したり、納期が遅れたりする泥沼に陥ります。
これは、お互いのゴール(コンセプト)が共有できていないために起こる事故です。
悲劇3:運用開始後に「軸」がブレて崩壊する
Webサイトは公開してからがスタートです。ブログを書いたり、SNSで発信したりする必要があります。
しかし、コンセプトという「軸」がないと、
「今日は真面目な記事」「明日はランチの写真」「明後日は業界の愚痴」
といった具合に、発信内容がバラバラになり、お客様は「結局、何屋さんなの?」と混乱して離れていきます。
2. コンセプト設計とは? 決めるべき「3つの柱」
では、具体的に「コンセプト設計」とは何をすればいいのでしょうか?
難しく考える必要はありません。以下の「3つの柱(3W1H)」を言語化するだけです。
- WHO(誰に):ターゲット設定
- WHAT(何を):提供価値・ベネフィット
- WHY YOU(なぜ貴社か):差別化・強み
この3つが一本の線で繋がった時、貴社のWebサイトは強力な磁力を持ち始めます。
3. 【柱1:WHO】 ターゲットを「たった一人」に絞り込む勇気
最初のステップにして、最大の難関が「ターゲット設定」です。
ここで多くの経営者様が「絞り込むのが怖い(機会損失になるのでは?)」と躊躇します。
しかし、断言します。絞れば絞るほど、Webサイトは売れます。
「ペルソナ」を設定する
「30代〜50代の女性」といった曖昧なターゲットはやめましょう。
「ペルソナ」と呼ばれる、実在しそうな「たった一人の人物像」まで落とし込みます。
- 名前:佐藤 陽子さん(仮名)
- 年齢:42歳
- 職業:パート勤務、小学生の子供が2人
- 悩み:最近、肌のハリがなくなり、鏡を見るのが憂鬱。高いエステには行けないが、同窓会までに何とかしたい。
- 検索行動:夜22時、子供が寝た後にスマホで「40代 肌 ハリ 自宅ケア」と検索している。
ここまで具体的にイメージできれば、サイトのデザインは「高級感より親しみやすさ」、キャッチコピーは「エステいらずの自宅ケア」といった正解が自動的に導き出されます。
「佐藤さん」に刺さる言葉は、同じ悩みを持つ全国の「佐藤さん予備軍」にも強烈に刺さります。
4. 【柱2:WHAT】 「機能」ではなく「未来」を売る
次に、そのターゲットに「何を提供するのか」を決めます。
ここで陥りがちなのが、「商品の機能(スペック)」を語ってしまうことです。
- ×「最新の〇〇成分を配合した化粧水です」
- ○「毎朝、鏡を見るのが楽しみになる化粧水です」
お客様はお金を出して「化粧水(モノ)」が欲しいのではありません。
肌がきれいになって「自信を取り戻した自分(未来)」が欲しいのです。
ベネフィット(利益)を言語化する
コンセプト設計では、貴社の商品・サービスを使うことで、ターゲットがどう変われるのか、どんなハッピーエンドが待っているのかを「ベネフィット」として言葉にします。
- 悩み:税金の計算が面倒で、本業に集中できない。
- 機能:全自動クラウド会計ソフト。
- ベネフィット:「領収書をスマホで撮るだけ。あなたは、面倒な経理から解放され、売上アップのことだけを考えられます」
Webサイトのトップページには、この「ベネフィット」を大きく掲げてください。それが、お客様の足を止める最強のフックになります。
5. 【柱3:WHY YOU】 競合ではなく「貴社」が選ばれる理由
最後に、「なぜ、他社ではなく貴社を選ぶべきなのか?」という理由を明確にします。
これをマーケティング用語で「USP(Unique Selling Proposition=独自の強み)」と呼びます。
「うちは普通の会社だから、強みなんてないよ」
そう謙遜される経営者様も多いですが、強みのない会社など存在しません。
強みを見つける3つの切り口
- 手軽さ・早さ:「どこよりも早い」「電話一本で駆けつける」「予約不要」
- 専門性・実績:「〇〇一筋30年」「地域No.1の施工実績」「〇〇専門資格保有者」
- 人柄・ストーリー:「社長の強烈な原体験」「スタッフの笑顔」「創業の想い」
特に中小企業の場合、大手企業には真似できない「人柄」や「想い」が最強の差別化になります。
「機能」や「価格」は真似されますが、「あなたの物語」は誰にも真似できません。
「私は、過去に〇〇で苦労しました。だからこそ、同じ悩みを持つあなたを助けたいのです」
このメッセージが、お客様の「共感」を呼び、価格競争を無効化する信頼を生み出します。
6. コンセプトを「Webサイト」に落とし込む方法
コンセプト(3つの柱)が決まったら、それを具体的なWebサイトの要素に変換します。これが「設計図」になります。
| コンセプト要素 | Webサイトでの表現(アウトプット) |
| WHO(誰に) | デザイン・テイスト (女性向けなら柔らかく、BtoBなら信頼感のある青など) |
| WHAT(何を) | キャッチコピー・トップ画像 (一目で「私のためのサイトだ!」と分かる言葉と写真) |
| WHY(なぜ) | コンテンツ(中身) (強みを証明する「お客様の声」「実績」「代表挨拶」の配置) |
この表が埋まって初めて、制作会社に「見積もり」を依頼する準備が整ったと言えます。
これを持っていけば、制作会社は「このお客様は軸がしっかりしている」と理解し、貴社の意図を汲んだ「刺さる提案」を持ってきてくれるはずです。
7. まとめ:コンセプト設計は、経営者の仕事である
Webサイト制作において、デザインやコーディング(構築)はプロに任せるべき領域です。
しかし、「誰に、何を、どう売るか」というコンセプト設計だけは、経営者である貴社にしかできません。
制作会社に「丸投げ」するのは、
「私の会社の魂を、あなたが勝手に決めてください」
と言っているのと同じです。
面倒に感じるかもしれません。しかし、このコンセプト設計に費やした時間は、Webサイトだけでなく、営業資料、チラシ、商談トーク、採用活動など、貴社のビジネス活動すべてにおいて、強力な指針(羅針盤)となります。
「とりあえず作る」のは、もう終わりにしましょう。
まずは紙とペンを用意して、たった一人のターゲット「ペルソナ」を想像するところから始めてみませんか?
その一人の心に深く刺さるコンセプトができた時、貴社のWebサイトは、24時間365日、理想のお客様を連れてくる「最強のパートナー」へと生まれ変わります。

