はじめに:「FC加盟に補助金が使える」は本当か、嘘か?
「新規事業として、人気のあのフランチャイズ(FC)に加盟したい」
「今の事業が頭打ちなので、安定したFCパッケージを導入して再起を図りたい」
そのように考えた時、真っ先に頭をよぎるのは「資金」の問題ではないでしょうか。
フランチャイズへの加盟には、加盟金、保証金、店舗改装費、研修費、システム導入費など、莫大な初期投資が必要です。「もし、この費用の一部でも国の補助金で賄えたら……」と考えるのは、経営者として極めて真っ当な思考です。
そして、FC本部の営業担当者からこんな言葉を囁かれたことはありませんか?
「社長、ご安心ください。うちのFC加盟には『事業再構築補助金』が使えますよ!」
「実質半額で開業できるチャンスです!」
結論から申し上げます。
フランチャイズ加盟で補助金を使うことは「可能」です。
しかし、そこにはFC本部の営業マンがあまり語りたがらない「高いハードル」と「厳しい条件」が存在します。
「FCならマニュアル通りにやればいいから楽勝だ」と思って申請すると、痛い目を見ることになります。なぜなら、補助金は基本的に「企業のオリジナリティ(創意工夫)」に対して支払われるものであり、「誰でもできるコピービジネス」にはお金を出したくないというのが国の本音だからです。
この記事では、数多くの補助金申請を支援してきたプロの視点から、FC加盟で使える具体的な補助金の種類、経費として認められる範囲、そして最も重要な「審査に合格するための事業計画書の書き方(独自性の出し方)」について、包み隠さず徹底解説します。
FC本部の甘い言葉を鵜呑みにせず、御社のキャッシュを守りながら賢く事業拡大するための「転ばぬ先の杖」として、ぜひ最後まで熟読してください。
1. そもそも、なぜFC加盟は「補助金が通りにくい」と言われるのか?
まずは、補助金審査の裏側にある「ロジック」を理解しましょう。ここを知っておかないと、どんなに立派な書類を作っても不採択になります。
1-1. 補助金は「イノベーション」を求めている
国の補助金(特に経済産業省系)の目的は、日本経済を活性化させることです。そのため、「他にはない新しいサービス」や「地域課題を解決する画期的な取り組み」を高く評価します。
一方で、フランチャイズビジネスの最大の強みは何でしょうか?
それは「成功モデルのパッケージ化」です。
どこに行っても同じ味、同じサービス、同じ看板。これがFCの価値です。
お気づきでしょうか。
「どこでも同じ(画一性)」というFCの強みは、「他にはない(差別化)」を求める補助金の趣旨と、真っ向から対立しやすいのです。
1-2. 「金太郎飴」事業には税金を使いたくない
審査員の心理になってみてください。
「本部から言われた通りの店を作ります。マニュアル通りに運営します」という計画書に対して、貴重な税金を投入したいと思いますか?
「それは本部が儲かるだけで、あなたの会社独自の強みではないですよね?」と判断され、点数が低くなる傾向があります。
これが、FC加盟案件が一般的に「採択ハードルが高い」と言われる最大の理由です。
しかし、諦める必要はありません。 このハードルを乗り越えるための「書き方のテクニック」が存在するからです(後ほど詳しく解説します)。
2. フランチャイズ加盟で使える!代表的な3つの補助金
では、具体的にどの補助金であればFC加盟に使える可能性があるのでしょうか。
代表的な3つの制度をご紹介します。
① 事業再構築補助金(じぎょうさいこうちくほじょきん)
- 相性: ★★★★☆(最もメジャー)
- 補助金額: 数百万円〜数千万円
- 特徴:コロナ禍や物価高の影響を受けた企業が、思い切って「別の業種・業態」に転換することを支援する制度です。例えば、「居酒屋」をやっていた会社が、FCに加盟して「無人餃子販売店」や「フィットネスジム」を始めるケースなどが該当します。FC加盟での申請事例が最も多く、金額も大きいため本命となる補助金です。
② 小規模事業者持続化補助金(しょうきぼじぎょうしゃじぞくかほじょきん)
- 相性: ★★★☆☆
- 補助金額: 50万円〜200万円程度(枠による)
- 特徴:販路開拓(チラシ、看板、Webサイト制作など)を支援する制度です。FC加盟店をオープンする際の「広告宣伝費」や「店舗改装費」として利用できます。金額は小さめですが、採択率が比較的高く、使い勝手が良いのが特徴です。
③ ものづくり補助金(ものづくりほじょきん)
- 相性: ★☆☆☆☆(かなり難しい)
- 補助金額: 100万円〜1,000万円以上
- 特徴:革新的なサービスの開発や生産プロセスの改善を支援する制度です。単にFCに加盟して店舗を出すだけでは、まず通りません。「FCの仕組みを使いつつ、自社独自のすごい技術やサービスを開発する」というレベルの独自性が求められるため、FC加盟での利用はハードルが非常に高いです。
3. どこまで経費になる?「加盟金」は対象外の落とし穴
ここが最もトラブルになりやすいポイントです。
「開業にかかる費用、全部補助金でまかなえますよね?」
そう思っていると、資金計画が破綻します。補助金には明確な「対象外経費」があるからです。
3-1. 「加盟金(入会金)」の扱いに注意!
FC本部に支払う初期費用には、様々な名目があります。
- 加盟金(権利金)
- 保証金
- 研修費
- システム導入費
このうち、「加盟金」や「保証金」は、補助金の対象外になるケースが多いです。
これらは「将来返還される可能性があるお金(保証金)」や「権利を買うためのお金」とみなされ、設備投資とは見なされないことがあるからです。
※ただし、「事業再構築補助金」の一部の公募回では、条件付きで加盟金が認められたケースもあります。しかし、ルールは毎回変わります。「加盟金も出るはずだ」と決めつけず、必ず最新の公募要領を確認してください。
3-2. 補助対象になりやすい経費
逆に、比較的認められやすいのは以下の経費です。
- 店舗改装費・工事費: FC店舗の内外装工事。
- 機械装置費: 厨房機器、専用端末、フィットネス器具など。
- 広告宣伝費: オープン告知のチラシ、Webサイト作成費(持続化補助金の場合)。
3-3. 補助対象にならない経費
- 不動産の購入・賃貸費用: 店舗の敷金・礼金・家賃は対象外です。
- 汎用性のある備品: パソコン、タブレット、公道を走る車両など(他の目的にも使えるため)。
- 消耗品費: 食材、洗剤、事務用品など。
「店舗を借りる初期費用」や「本部に払う加盟金」は自己資金で用意し、「内装や設備」に補助金を使う。この切り分けが重要です。
4. 審査員を納得させる!FC申請における「独自性」の出し方
ここからが本記事のハイライトです。
「金太郎飴」と言われないために、事業計画書でどのように「独自性(オリジナル要素)」をアピールすればよいのでしょうか。
プロが使う3つのロジックを伝授します。
ロジックA:地域特性との掛け合わせ(ローカライズ)
「〇〇というFCに加盟します」で終わらせず、「この地域の〇〇という課題を解決するために、このFCの仕組みを利用します」という書き方をします。
- 悪い例:「全国で人気のカフェFCに加盟し、売上を上げます。」
- 良い例:「高齢化が進む当地域では、高齢者の安否確認やコミュニティ形成が課題となっている。そこで、カフェFCに加盟し飲食を提供するだけでなく、店舗を『地域の高齢者サロン』として開放。さらに、FCの配食サービス網を活用し、独自の『見守りサービス』を付加することで、地域課題を解決する。」
このように、「FCはあくまでツール(手段)であり、目的は地域貢献や自社の独自サービスにある」という構成にします。
ロジックB:既存事業とのシナジー(相乗効果)
御社が現在行っている事業と、FC事業を組み合わせることで、新しい価値が生まれることをアピールします。
- 例:「建設業」の会社が「コインランドリーFC」をやる場合。→「ただのコインランドリーではなく、建設業で培ったリフォーム技術を活かし、店内に『住まいの相談窓口』を併設。洗濯の待ち時間にリフォーム相談ができる新業態を構築する。」
これなら、単なるFC加盟ではなく、御社にしかできないオンリーワンの事業になります。
ロジックC:本部マニュアル +α の工夫
FC本部が提供するマニュアルに加え、自社独自のオペレーションやサービスを追加することを明記します。
- 例:「FC本部のマニュアルに加え、自社独自のデジタル顧客管理システムを連携させ、徹底したパーソナライズ接客を行う」「地元の農家と契約し、FCメニューの一部に地元食材を使用した限定メニュー(本部承諾済み)を提供する」
ポイントは、「本部に頼りきりではない」という姿勢を見せることです。
5. 絶対に騙されないで!FC本部の「甘い勧誘」の裏側
非常に残念なことですが、補助金業界には「補助金をエサにFC加盟を迫る悪質な業者」が存在します。
彼らの手口を知り、自衛してください。
危険なトーク①:「補助金で実質0円で開業できます!」
真実: 補助金は「後払い」です。
最初に数千万円の工事費や加盟金を全額支払うのは「御社」です。補助金が入ってくるのは、事業が完了して検査に合格した、約1年〜1年半後です。
その間の「つなぎ資金」が確保できていないと、補助金が入る前に資金ショートして倒産します。「0円で始められる」というのは、キャッシュフローを無視した無責任な発言です。
危険なトーク②:「申請書類は本部が全部用意します!(丸投げOK)」
真実: これは非常に危険、かつ違法スレスレです。
FC本部が用意した「金太郎飴のような画一的な事業計画書」を使い回して申請するとどうなるか?
審査員はプロですから、「あ、またこのFCのコピペ計画書か」とすぐに見抜きます。結果、大量不採択になります。
過去に、特定のFC加盟店申請が一斉に不採択になった事例はいくつもあります。
また、もし内容に虚偽(実態と違うこと)が書かれていて、それが採択後にバレた場合、不正受給として処分を受けるのは「御社」です。 本部は責任を取ってくれません。
危険なトーク③:「100%採択されます!」
真実: 補助金に「絶対」はありません。
どれほど完璧な計画でも、その時の予算や競争倍率によって落ちることはあります。
リスク説明をせず、メリットばかり強調する業者は信用してはいけません。
6. 成功するための「正しい手順」ロードマップ
最後に、FC加盟で補助金を活用するための、失敗しない手順を整理します。
ステップ1:FC契約を結ぶ「前」に相談する
FC契約書にハンコを押して、支払いを済ませてしまってからでは、補助金申請はできません(事前着手の例外を除く)。
必ず、「契約前・発注前」の段階で、認定支援機関(税理士や中小企業診断士)に相談してください。
ステップ2:資金調達(融資)の確約を取る
補助金は後払いです。まずは金融機関から「つなぎ融資」を受けられるか確認しましょう。
「補助金が出る予定です」と言えば、銀行も話を聞いてくれやすいですが、「採択されなかったらどう返済するか」もシビアに見られます。
ステップ3:独自性のある事業計画を練る
FC本部から貰った資料はあくまで「参考資料」です。
そこに、御社独自の強み、地域特性、シナジー効果をトッピングし、「御社だけの事業計画書」にリライトする必要があります。
ここはプロ(認定支援機関)の腕の見せ所です。
ステップ4:採択通知が来てから契約・発注
原則として、採択通知(合格発表)が来てから、FC契約や工事の発注を行います。
見切り発車で契約してしまうと、対象外経費になってしまうので注意してください。
まとめ:FC加盟は「手段」。補助金の「目的」を忘れないで
今回は、フランチャイズ加盟における補助金活用について、かなり踏み込んで解説しました。
要点を振り返りましょう。
- FC加盟でも補助金は使える。 ただし「事業再構築補助金」などがメイン。
- 「加盟金」は対象外になることが多い。 設備費や改装費に充てるのが賢い。
- 「マニュアル通り」は不採択の元。 地域性やシナジーで「独自性」を出す。
- 「実質0円」は嘘。 後払いなので、当面の資金力は必須。
- FC本部のコピペ計画書は危険。 必ず自社用にカスタマイズする。
フランチャイズは、成功確率の高い素晴らしいビジネスモデルです。
しかし、補助金をもらうためには、そのモデルに「御社なりの付加価値」を乗せる必要があります。
「補助金がもらえるからFCをやる」のではなく、
「このFCを使って、地域にこんな新しい価値を提供したい。その加速装置として補助金を使う」。
この順序で考えられる経営者様であれば、審査員もきっと心を動かされ、採択という切符を手にできるはずです。
もし、「このFCで申請したいが、どんな独自性を出せばいいかわからない」「本部から提案された計画書が大丈夫か見てほしい」という不安があれば、契約書にサインする前に、ぜひ私たち専門家にご相談ください。
第三者の冷静な視点で、その計画が「補助金的にアリかナシか」を診断いたします。
賢い判断と戦略で、御社の新しい挑戦が成功することを心より応援しています。
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