リニューアルでSEO順位が落ちた…を防ぐ。制作会社が教える安全な移行手順

目次

~「サイトの引っ越し」で失敗しないために経営者が知るべき、たった1つの重要ルール~

「ホームページをリニューアルしたら、今まで毎日のように来ていた問い合わせがピタッと止まってしまった」

「社名で検索しても、自社のサイトが出てこなくなった」

これは決して怪談話ではありません。Web制作の現場で、悲しいことに頻繁に起きている「リニューアルの失敗事例」です。

何百万円もの投資をして、デザインを美しくし、スマホ対応も完璧にした。それなのに、肝心の「売上(集客)」が消えてしまったとしたら…。経営者として、これほど恐ろしいことはありません。

なぜ、このような悲劇が起きるのでしょうか?

デザインが悪かったから? いえ、違います。

サーバーが弱いから? それも違います。

原因の9割は、「SEO(検索エンジン対策)を考慮した引き継ぎ処理」が行われていなかったことにあります。

多くの経営者様は、「制作会社に頼めば、当然うまくやってくれるだろう」と考えがちです。しかし、実は「デザインが得意な制作会社」「SEOの内部構造に詳しい」とは限りません。ここに大きな落とし穴があります。

この記事では、Web集客のプロフェッショナルである私が、リニューアル時に検索順位を落とさない(むしろ上げる)ための「安全な移行手順」について解説します。

難しいプログラムの話はしません。「郵便局の転送届」の話ができれば十分に理解できる内容です。

御社の大切なWeb資産を守るために、発注前に必ず目を通してください。


1. なぜ、リニューアルで「検索順位」が消滅するのか?

まずは、順位が落ちるメカニズムを簡単に理解しましょう。これを知っているだけで、制作会社との打ち合わせの質が変わります。

1-1. Googleは「新しいサイト」を別人だと思う

例えば、御社が長年運営してきた「example.com/service」というページが、Google検索で1位だったとします。

リニューアルに伴い、このページのURLを「example.com/products」に変更したとしましょう。

人間から見れば「名前が変わっただけ」ですが、Googleのロボットから見ると、これは「全く別の新しいページ」として認識されます。

これまでのページ(/service)に蓄積された「信頼」や「評価」は、新しいページ(/products)には自動的には引き継がれません。

その結果、評価ゼロの新人ページとして扱われ、検索順位は圏外へと消え去ります。これが「順位下落」の正体です。

1-2. 「404 Not Found」の悲劇

古いURLがお気に入りに登録されていたり、外部のブログからリンクされていたりした場合、URLが変わるとどうなるでしょうか?

クリックしても「ページが見つかりません(404エラー)」と表示されます。

これは、「店に行ったら更地になっていた」のと同じ状態です。

Googleは「このサイトはユーザーを迷子にさせる、不親切なサイトだ」と判断し、サイト全体の評価を下げてしまいます。


2. 資産を守る魔法の杖「301リダイレクト」とは?

では、どうすればいいのか?

ここで登場するのが、今回の記事で最も重要なキーワード、「301リダイレクト」です。

「郵便物の転送届」と同じ仕組み

引っ越しをする時、郵便局に「転送届」を出しますよね? これを出しておけば、古い住所に届いた手紙も、自動的に新しい住所へ転送してくれます。

Webの世界でも同じことができます。

「301リダイレクト」という設定を行うことで、古いURL(/service)へのアクセスを、自動的に新しいURL(/products)へ転送させることができます。

重要なのは「評価」も転送されること

301リダイレクトの凄いところは、人間を転送するだけでなく、「Googleの評価(検索順位のパワー)」も新しいページに引き継いでくれる点です。

これさえ正しく設定しておけば、URLが変わっても検索順位を大きく落とすことなく、スムーズに新しいサイトへ移行できます。

逆に言えば、「リニューアル見積もりに『301リダイレクト設定』が含まれていない制作会社は危険」と断言しても過言ではありません。


3. 失敗しないための「安全な移行」5つのステップ

それでは、実際にどのような手順でリニューアルを進めればよいのか、時系列で解説します。制作会社がこのフローを理解しているかどうかのチェックリストとしてお使いください。

STEP 1:【現状把握】資産となっているページを特定する

まずは、今のサイトで「どのページが稼いでいるのか」を知る必要があります。

Googleアナリティクスなどを見て、アクセスが多いページ、検索順位が高いページをリストアップします。

このリストにあるページは、リニューアル後も絶対に削除してはいけません。 内容を刷新するにしても、ページ(URL)の存在は維持する必要があります。

STEP 2:【設計】新旧URLの対照表(リダイレクトマップ)を作る

ここが一番の山場です。

「古いサイトのAページは、新しいサイトのBページへ転送する」

「古いCページは、新しいDページへ転送する」

という、「新旧URL対照表(リダイレクトマップ)」を作成します。

面倒な作業ですが、これを1ページずつ丁寧に行うことでしか、順位維持は実現できません。「トップページにまとめて転送しておけばいいや」という手抜き工事は、SEO評価を捨てることになるのでNGです。

STEP 3:【制作】SEOタグの引き継ぎ

デザインが変わっても、中身の骨格(HTMLタグ)が弱くなってはいけません。

  • titleタグ(検索結果に出るタイトル)
  • descriptionタグ(説明文)
  • h1タグ(大見出し)

これらが、リニューアル前よりも適切なキーワードを含んでいるか、あるいは以前の良い状態を引き継げているかを確認します。

STEP 4:【公開設定】301リダイレクトの実装

新しいサイトを公開するタイミングで、サーバーに301リダイレクトの設定ファイルをアップロードします。

これにより、古いURLをクリックした瞬間に、新しいURLへ自動的にジャンプするようになります。

STEP 5:【事後確認】Googleへの通知と動作チェック

公開して終わりではありません。

「Googleサーチコンソール」というツールを使って、Googleに「サイトを移転しました」と通知(サイトマップの送信)を行います。

そして、実際に古いURLを叩いてみて、正しく新しいページに転送されるか、リンク切れがないかを徹底的にチェックします。


4. 経営者が注意すべき「やってはいけない」リニューアル

良かれと思ってやったことが、実はSEO的にマイナスになるケースがあります。

× 過去の「ブログ記事」を大量に削除する

「昔のお知らせやブログが整理されていないから、リニューアル機に全部消してスッキリさせよう!」

これは非常に危険です。

実は、数年前に書いた何気ないブログ記事が、検索からの流入を稼いでくれているケースが多々あります。これらを消すということは、「集客の入り口」を自ら塞ぐことになります。

どうしても消したい場合は、内容が似ている新しいページへリダイレクト(転送)をかける必要があります。

× テキストを減らして「画像ばかり」にする

「今風におしゃれにしたいから、文字を減らして写真を大きくしよう」

デザイン的には正解ですが、SEO的にはリスクがあります。Googleは「文字(テキスト)」を読んでページの内容を理解しています。

文字情報が極端に減ると、「情報量が少ないページ」と判断され、順位が下がる可能性があります。画像を使う場合も、必ず何が写っているかを示す説明文(alt属性)を入れるなどの対策が必要です。


5. 正しい制作会社の選び方・見抜き方

ここまでの内容を踏まえて、リニューアルを成功させるパートナー選びのコツをお伝えします。

商談の際、担当者に次の質問を投げかけてみてください。

「リニューアルに伴うURL変更時の『301リダイレクト処理』は、お見積もりに含まれていますか?」

頼れるパートナーの反応

  • 「もちろんです。現在の上位表示ページを調査し、リダイレクトマップを作成して実装します。」
  • 「SEO順位への影響を最小限にするため、今回はURL構造を変えない提案をしようと考えていました。」

このような回答が返ってくれば、その会社は「Web集客の仕組み」を理解している信頼できるパートナーです。

危険なパートナーの反応

  • 「あー、リダイレクトですね。オプションで対応できますよ(重要性を理解していない)」
  • 「新しいサイトになれば自然とGoogleが見つけてくれるので、大丈夫ですよ(嘘です、大丈夫ではありません)」
  • 「301?ちょっと確認します…(知識がない)」

このような反応であれば、その会社はデザイン専門であり、マーケティングやSEOには弱い可能性があります。集客を目的とするなら、再考した方が良いでしょう。


6. まとめ:リニューアルは「守り」と「攻め」のセットで

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

ホームページのリニューアルは、新しいデザインで企業のブランド力を高める**「攻め」の施策です。

しかし、同時にこれまで積み上げてきたSEO評価やアクセス数という資産を失わないための「守り」の施策が不可欠です。

「301リダイレクト」

この専門用語を一つ覚えておくだけで、御社のWeb戦略は大きく変わります。

見かけの美しさだけでなく、裏側の「配管工事」もしっかり行ってくれる制作会社を選ぶこと。それが、失敗しないリニューアルの唯一の解です。

もし現在、リニューアルを検討中であれば、デザインの話に入る前に、一度「今のサイトの健康診断(SEO調査)」を行ってみてはいかがでしょうか?

「実はこのブログ記事が、月に1000人も集客していた!」なんていう、嬉しい発見があるかもしれません。

その発見こそが、次のリニューアルを成功させるための羅針盤になるはずです。


【編集後記】

この記事を執筆しながら、過去に相談を受けたある社長様の顔が浮かびました。

その会社は、リニューアルでSEO順位が急落し、売上が半減してしまっていました。調査すると、リダイレクト設定が一切されておらず、すべてのリンクが切れている状態でした…。

その後、私たちが緊急処置を行い、半年かけて順位を戻しましたが、失った半年間の売上は戻ってきません。

「知っているか、知らないか」。Webの世界では、それだけで数千万円の差がつくことがあります。

この記事を読んだあなたが、そんなリスクを回避し、素晴らしいリニューアルを成功されることを心から願っております。

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