~「一式」に騙されないで。ブラックボックス化するWeb制作費の正体と、賢い見極め方~
「ホームページ制作の見積もりを取ったら、A社は50万円、B社は200万円だった。この150万円の差はいったい何なんだ?」
「見積書に『一式』とばかり書かれていて、何にいくらかかっているのかサッパリ分からない」
「安いと思って契約したのに、後からオプション費用を請求されて予算オーバーした」
経営者の皆様、Web制作の見積もりを見て、このようなモヤモヤを感じたことはありませんか?
無理もありません。Web制作業界の価格設定は、建設業や製造業に比べて非常に分かりにくく、いわば「ブラックボックス」になりがちです。
定価がないサービスゆえに、制作会社によって「松・竹・梅」の基準がバラバラ。そのため、知識がないまま発注すると、「高いお金を払ったのに、中身はスカスカだった」という悲劇が起こり得ます。
しかし、ご安心ください。
金額の差には、必ず「理由」があります。そして、その理由が「御社の利益になる理由(投資)」なのか、「制作会社の都合による理由(浪費)」なのかを見極める方法は存在します。
この記事では、Web業界の裏側を知り尽くした私が、見積書を見る際に絶対に外してはいけない「3つの必須チェック項目」を解説します。
この記事を読めば、お手元の見積書が「適正価格」なのか、それとも「ぼったくり(あるいは安物買いの銭失い)」なのか、ご自身で判断できるようになります。
大切なお金を守り、成果の出るWebサイトを手に入れるために。ぜひ最後までお付き合いください。
1. まず知っておくべき「制作費の正体」
具体的なチェック項目の前に、そもそもWeb制作費が何で構成されているかを知っておきましょう。これを知ると、見積もりの見方がガラリと変わります。
原価はほぼ「0円」。では何にお金を払うのか?
Webサイトを作るのに、木材やコンクリートといった材料費はかかりません。
費用の正体は、ズバリ「人件費(時間)」です。
- ディレクター(現場監督): 戦略を練り、進行管理をする時間。
- デザイナー(設計士): 見やすく美しい画面を作る時間。
- エンジニア(大工): プログラムを組み、動くようにする時間。
- ライター(作家): お客様に響く文章を書く時間。
見積もりが高い会社は、それだけ「優秀なプロが、御社のために多くの時間を使う」ということです。
逆に、極端に安い見積もりは、「時間をかけずに作る(テンプレートに流し込む)」か、「作業工程を省く(テストをしない、ヒアリングをしない)」かのどちらかです。
「安さ」には必ず理由があります。その理由が、御社にとって許容できるものかどうか。そこが判断の分かれ目です。
2. 【必須チェック①】「スマホ対応」と「修正回数」の落とし穴
それでは、実際の見積もり項目を見ていきましょう。
まず一つ目は、デザインや構築に関する項目です。ここでよくあるトラブルが、「追加費用の発生」です。
「レスポンシブ対応」は含まれているか?
今の時代、スマホ対応(レスポンシブデザイン)は必須です。しかし、安い見積もりの場合、ここが別料金になっているケースがあります。
- 確認方法: 見積書に「レスポンシブコーディング」や「スマホ対応」という項目があるか確認してください。
- 注意点: 「PCサイト制作費」しか書かれていない場合、スマホで見ると崩れるサイトが納品される恐れがあります。今は「スマホファースト」の時代。PCサイトのおまけではなく、「スマホサイトが主役」として作られているかを確認しましょう。
「修正」は何度まで無料か?
デザインが出てきた時、「イメージと違うから直してほしい」と思うことは必ずあります。
この時、「修正は2回まで無料。3回目以降は別途費用」という会社もあれば、「納得いくまで修正無料」という会社もあります。
- 確認方法: 備考欄に「修正回数制限」についての記載があるかチェックしてください。
- リスク: 格安会社の場合、「一度確定したら、文字一文字の修正でも有料」という厳しい条件がついていることがあります。こだわりが強い経営者様は、修正回数に余裕を持たせた契約が必要です。
3. 【必須チェック②】「原稿」と「素材」は誰が用意するのか?
二つ目は、サイトの中身(コンテンツ)に関する項目です。
ここが最もトラブルが多く、かつサイトの品質(集客力)を左右する最重要ポイントです。
「原稿作成費」が入っているか?
見積もりが安い場合、十中八九、原稿は「お客様支給(御社が自分で書く)」になっています。
これには大きなリスクがあります。
- 社長の負担増: 本業で忙しい中、何十ページもの文章を書くのは至難の業です。これで公開が半年遅れるケースが多発しています。
- 素人の文章: 社長が書く文章は「想い」はあっても、「売れる構成(セールスライティング)」になっていないことが多いです。
- アドバイス: もし集客を目的とするなら、高くても「ライティング(原稿作成)」が含まれているプラン、あるいはプロのライターが取材に来てくれるプランを選んでください。文章のプロにお金を払うことは、デザインにお金を払う以上に投資対効果が高いです。
「写真撮影費」は削ってはいけない
「写真はスマホで撮ったやつを送ります」
コストダウンのためにこう言う経営者様が多いですが、これはおすすめしません。
Webサイトの印象の7割は「写真」で決まります。素人の暗い写真を使うと、どんなに高級なデザインも一瞬で安っぽくなります。
- 確認方法: 見積もりに「写真撮影費(カメラマン派遣)」が入っているか。入っていないなら、オプションで追加できるか確認しましょう。5万〜10万円の追加で、サイトのクオリティが劇的に上がります。
4. 【必須チェック③】「公開後」の費用と権利関係
三つ目は、サイトを作った後にかかる費用と、権利の話です。
ここを見落とすと、後で「解約できない」「サイトが消える」といった深刻な事態に陥ります。
月額管理費(保守費)の内訳は?
「月額 10,000円」と書かれていたら、その中身を必ず聞いてください。
- サーバー・ドメイン代だけ? (それなら高すぎます。実費は月数百円〜数千円です)
- 修正対応込み? (「月1回までのテキスト修正を含む」ならお得です)
- レポート提出あり? (アクセス解析などの報告があるなら安心です)
「何をしてくれるのか分からない管理費」を払い続けるのは、経費の無駄遣いです。サポート内容が明記された契約書を交わしましょう。
ドメインとサーバーの「名義」は誰か?
これが最大の落とし穴です。
格安制作会社の中には、ドメイン(住所)とサーバー(土地)を「制作会社名義」で契約し、解約時に返してくれない(あるいは高額な移管手数料を請求する)業者が存在します。
これは、「家を建てたけれど、土地と住所の権利は建築会社が持っている」のと同じです。一生その会社に家賃を払い続けなければなりません。
- 確認方法: 「将来的に解約した場合、ドメインは自社に移管できますか? 手数料はいくらですか?」と質問してください。
- 正解: ドメインとサーバーは、最初から「御社(自社)名義」で契約するのが最も安全です。アカウント管理を代行してもらうのは構いませんが、権利者は御社であるべきです。
5. 「一式見積もり」が出たら要注意!詳細を出させる魔法の言葉
見積書に「Webサイト制作一式:100万円」としか書かれていなかったら。
そのまま契約してはいけません。「一式」の中には、制作会社がリスクを回避するためのマージン(予備費)がたっぷり含まれているか、逆に必要な作業が抜けている可能性があります。
そんな時は、こう伝えて詳細見積もりを出してもらいましょう。
「社内で検討するために、各工程の内訳を知りたいです。デザイン費、コーディング費、ディレクション費、原稿作成費に分けて出し直していただけますか?」
まともな会社の反応
「承知しました。詳細な内訳を作成しますね」
→ 信頼できます。作業内容に自信がある証拠です。
怪しい会社の反応
「うちは一式でやっているので、出せません」
「細かく出すと逆に高くなりますよ」
→ 注意が必要です。説明できないコストが含まれている可能性があります。
6. まとめ:見積書は「会社の姿勢」を映す鏡
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
見積書チェックのポイントをまとめます。
- スマホ対応や修正回数の条件は明記されているか?
- 原稿や写真は「誰が」用意するのか?(プロに頼む価値はある)
- 公開後のドメイン権利や、管理費の内訳はクリアか?
見積書は、単なる金額の提示ではありません。
その制作会社が、「どこまで御社のビジネスに責任を持とうとしているか」を表す意思表示です。
項目が細かく、備考欄に丁寧な説明書きがある見積書を作る会社は、実際の制作現場でも丁寧な仕事をしてくれる可能性が高いです。
逆に、どんぶり勘定の「一式」見積もりを出す会社は、仕事も雑になる傾向があります。
金額の安さに飛びつく前に、その見積書の「行間」を読んでみてください。
「ここはどうなっていますか?」と質問した時、面倒くさがらずに丁寧に答えてくれる担当者こそが、御社のビジネスを成功に導くパートナーです。
御社が、納得のいく価格で、最高の結果を出すWebサイトを手に入れられることを、心より応援しております。
【編集後記】
余談ですが、私が過去に見積もり依頼をした際、ある会社から「ディレクション費」として全体の30%の費用が計上されていました。最初は「高いな」と思いましたが、話を聞くと「御社の競合を徹底的に調査し、勝てる戦略を練る費用です」と言われました。
結果、その会社に依頼し、素晴らしい成果が出ました。
「高い理由」が「戦略」にあるなら、それはコストではなく「投資」になります。
数字の裏にある「価値」を、ぜひ見極めてくださいね。

