助成金とは?補助金との違いを分かりやすく解説します

「事業のためのお金が欲しい」

「国から”返済不要のお金”がもらえる制度があるらしい」

そう思って調べ始めると、必ず目にするのが「助成金(じょせいきん)」「補助金(ほじょきん)」という二つの言葉。

「……で、これ、何が違うの?」

「名前が似ていて、さっぱり分からない」

「どっちがウチの会社に向いているんだ?」

日々、資金繰りや経営戦略に頭を悩ませる個人事業主・中小企業の経営者様にとって、この「分かりにくさ」こそが、せっかくのチャンスを逃す最大の「壁」になっているのではないでしょうか。

この記事は、まさにそんなあなたのための「羅針盤」です。

この記事を最後まで読めば、これまで霧がかかっていた「助成金」と「補助金」の姿がハッキリと見え、「今、御社が真っ先に申請すべきはどちらか」が明確になります。

知識ゼロからでも大丈夫です。専門用語を一切使わず、どこよりも分かりやすく「資金調達の地図」を広げていきましょう。

目次

【結論】「助成金」と「補助金」の決定的な違いとは?

まず、一番大切な「結論」からお伝えします。

どちらも「国や自治体から支給される、原則返済不要のお金」という点は同じです。

しかし、その「目的」と「もらいやすさ」が、水と油ほど違います。

例えるなら、このイメージを強く持ってください。

  • 助成金 = 要件を満たせばOK「ミッション(達成報酬)」
  • 補助金 = 審査で選抜される「コンテスト(選抜)」

このイメージを念頭に、両者の「正体」を詳しく見ていきましょう。

1. 助成金(じょせいきん)とは?

  • 担当(主な出どころ): 厚生労働省
  • 目的: 「ヒト(人)」に関すること。具体的には、「雇用の安定」「職場環境の改善」です。
  • 具体例:
    • パートタイマーを正社員にした
    • 従業員にスキルアップのための研修を受けさせた
    • 育児と仕事が両立できる制度(育休など)を整えた
  • 最大の特徴:国が「こういう職場環境を整えてくれたら、ご褒美としてお金を出しますよ」という制度です。したがって、補助金のような「競争」はありません。定められた要件(ルール)をすべて満たし、正しく手続きを踏めば、原則として受給できます。

2. 補助金(ほじょきん)とは?

  • 担当(主な出どころ): 経済産業省や自治体
  • 目的: 「モノ・カネ」に関すること。具体的には、「新しい事業への挑戦」「国の政策(例:IT化)の推進」です。
  • 具体例:
    • 生産性を上げるために、新しい機械を導入する
    • 集客のために、ホームページをリニューアルする
    • 新商品を開発するための研究費に充てる
  • 最大の特徴:国が「この事業は、日本の未来に役立ちそうだ!」と判断した「優れた事業計画」に対して、投資を支援する制度です。したがって、必ず「審査」があります。予算と採択(合格)枠が決まっているため、どんなに良い計画でも、他の応募者との「競争」に負ければ「不採択(不合格)」となり、1円ももらえません。

【早見表】一目でわかる! 助成金 vs 補助金 徹底比較

ここまでの内容を、忙しい経営者様のために「早見表」にまとめました。

御社の「今の悩み」は、どちらに近いかチェックしてみてください。

比較ポイント助成金 (ミッション)補助金 (コンテスト)
主な目的雇用の安定・促進
(職場環境の改善)
国の政策推進
(事業革新、IT化、販路開拓)
主な管轄厚生労働省経済産業省、自治体 など
対象ヒト(雇用、研修、制度整備)モノ・カネ(設備投資、システム導入、広告宣伝費)
難易度やさしい
(要件を満たせば、原則受給
難しい
審査と競争があり、不採択になる)
公募時期通年(いつでも申請しやすいものが多い)短期間(「〇次公募」など。スピード勝負)
こんな会社向け「従業員の環境を整えて、守りを固めたい「新しい投資をして、攻めに転じたい

この記事のタイトルは「助成金とは?」です。

ここからは、補助金よりも「難易度が低い」にもかかわらず、多くの経営者様が見逃してしまっている「助成金」について、そのメリットと活用法を徹底的に深掘りします。

なぜ「助成金」は、中小企業・個人事業主の「最強の味方」なのか?

補助金は「コンテスト」なので、申請に時間と労力をかけても「不採択(0円)」のリスクが常につきまといます。

しかし、助成金は「ミッション」です。ルール通りに実行すれば、ほぼ確実にもらえます。

これは、経営者にとって「売上」と同じくらい「計算できる資金源」になることを意味します。

助成金を活用すべき、3つの強力なメリットを見ていきましょう。

メリット1:【最大の魅力】要件を満たせば「原則もらえる」という予測可能性

これに尽きます。

「〇〇助成金」のルールブック(支給要領)を読み、「AとBとCを実行する」と決めて、その通りに実行し、期限内に申請すれば、お金が振り込まれます。

  • 「ライバル企業が優秀だったから落ちた」
  • 「審査員の心に響かなかったから落ちた」
  • 「予算がなくなったから打ち切られた」

といった「不確実性」がほぼありません。

これは、経営計画や資金繰り計画を立てる上で、これ以上ない「安定材料」となります。

メリット2:「ヒト」への投資が、そのまま「会社の資産」になる

助成金は「雇用の安定・改善」が目的だとお伝えしました。

申請のために、あなたは「従業員のための研修」や「働きやすい就業規則」を整備することになります。

それは、

  • 従業員のスキルが上がり、生産性が向上する
  • 従業員の満足度が上がり、離職率が低下する
  • 「働きやすい会社」として、採用活動が有利になる

という、お金(助成金)以上の「リターン」を会社にもたらします。

助成金の申請プロセスそのものが、あなたの会社を「強い組織」へと変える「仕組みづくり」になるのです。

メリット3:「国のお墨付き」という社会的信用

「あの会社は、助成金を活用している」

この事実は、対外的に「国が定める雇用ルール(労働基準法など)をしっかり守り、従業員を大切にしている”ホワイト企業”である」という、何よりの**「お墨付き(証明)」**となります。

この「信用」は、金融機関からの融資(借り入れ)をスムーズにし、優秀な人材を集め、取引先との関係を良好にするなど、あらゆるビジネスシーンで「見えない資産」として機能します。

【警告】助成金申請の前に…これを知らないと「1円」ももらえない落とし穴

「いいことずくめだ!すぐに申請しよう!」

…と、その前に。

助成金には、補助金とは違う「特有の落とし穴」が存在します。

これを知らないと、「要件を満たしたはずなのに、不支給(0円)になった…」という最悪の事態を招きます。

落とし穴1:【最重要】申請の「順番」を間違えると即アウト

これが、助成金申請で最も多い失敗例です。

助成金の多くは、「Aをします」という計画書を【事前に】提出し、役所(労働局など)の認定を受けてから、【その後に】Aを実行しなければなりません。

【ダメな例】

「あ、そういえばウチ、3ヶ月前にパートさんを正社員にしたな。キャリアアップ助成金が使えるらしいから、今から申請しよう」

→ アウトです。 1円ももらえません。

【OKな例】

「来月、パートのAさんを正社員にしようと思う」

→ 【今すぐ】 キャリアアップ助成金の「計画届」を提出し、認定を受ける。

→ 認定後、Aさんと雇用契約を結び、正社員として登用する。

→ 6ヶ月後、要件を満たしたことを確認し、「支給申請」を行う。

この「実行する前に、まず計画書を出す」という順番が、何よりも重要です。

落とし穴2:そもそも「基本的な労働法規」を守っていないと門前払い

助成金の出どころは「厚生労働省」です。

厚生労働省は「労働法規(労働基準法など)」の番人でもあります。

  • 従業員を雇っているのに「労働保険(雇用保険・労災保険)」に入っていない
  • 出勤簿(タイムカード)がなく、労働時間を管理していない
  • 残業代を正しく支払っていない
  • (従業員10名以上なのに)就業規則を作成・届出していない

これら、会社として「当たり前」のルールを守れていない場合、助成金の申請資格そのものがありません。

「お金が欲しい」と言う前に、「まずはルールを守ってください」と門前払いされてしまいます。

落とし穴3:助成金も「後払い(精算払い)」が基本

これは補助金とも共通する注意点です。

「申請したら、すぐにお金が振り込まれる」わけではありません。

(例:キャリアアップ助成金)

  1. 正社員に転換する
  2. 正社員として6ヶ月間、給与を払い続ける
  3. その6ヶ月間の実績(給与台帳、出勤簿など)を揃えて「支給申請」
  4. 審査(数ヶ月)
  5. 【入金】

つまり、正社員化してから実際にお金が振り込まれるまで、半年~1年近くかかります。

この間の「立て替え資金(キャッシュ)」は、自社で用意しなければなりません。


あなたの会社も使える!個人事業主・中小企業のための「3大助成金」

「落とし穴は分かった。で、具体的にウチは何が使えるの?」

という経営者様へ。

人を1人でも雇っている(または、これから雇う)会社であれば、ほぼ確実に活用できる「3大助成金」を紹介します。

1. キャリアアップ助成金(正社員化コース)

  • 一言でいうと:「パート」や「アルバイト」「契約社員」といった非正規雇用の従業員を、「正社員」に転換(キャリアアップ)させた場合に、ドカンと支給される、最もメジャーな助成金です。
  • こんな会社に:
    • 「優秀なパートさんに、もっと長く働いてほしい」
    • 「正社員を増やして、会社の”核”となる人材を育てたい」
  • 特徴:1人あたり数十万円(生産性要件を満たすと増額)が支給されます。(例:有期雇用→正社員化 = 1人あたり57万円)「人」への投資として非常にリターンが大きく、多くの企業が活用しています。

2. 人材開発支援助成金

  • 一言でいうと:従業員のスキルアップのための「研修」(社外のセミナー参加や、社内でのOJTなど)にかかった「経費」や「研修中の賃金」の一部を助成してくれます。
  • こんな会社に:
    • 「新入社員に、しっかりとしたビジネスマナー研修を受けさせたい」
    • 「管理職に、マネジメント研修を受けてほしい」
    • 「IT化のために、従業員に新しいソフトの講習を受けさせたい」
  • 特徴:「教育訓練」を計画的に行うことで、従業員の質が上がり、結果として会社の業績アップにつながります。それを国が後押ししてくれる制度です。

3. 両立支援等助成金(育児休業等支援コースなど)

  • 一言でいうと:従業員が「育児休業」や「介護休業」を取得しやすい「職場環境」を整備し、実際に従業員が休業・復帰した場合に支給されます。
  • こんな会社に:
    • 「もうすぐ産休に入る従業員がいる」
    • 「優秀な女性従業員に、出産後も戻ってきてほしい」
    • 「”子育てサポート企業”として、会社のイメージを上げたい」
  • 特徴:これからの「人手不足」の時代において、優秀な人材(特に女性)に長く働いてもらうための「環境整備」は、経営戦略そのものです。その取り組みを金銭面でサポートしてくれます。

ゼロから受給まで!「助成金」申請の完璧な6ステップ

「よし、ウチはキャリアアップ助成金を狙おう!」

そう決めたら、次に「どう動くか」です。

申請から入金までの「完璧な流れ」を、6ステップで解説します。

ステップ1:【最重要】自社の「労働環境」を総点検する

申請の「前」に、まずは自社の足元を固めます。

「落とし穴2」で解説した、以下の項目をクリアできているか確認してください。

  • 労働保険(雇用保険・労災保険)に加入しているか?
  • 社会保険(健康保険・厚生年金)に加入しているか?(※法人・従業員5名以上の個人事業所)
  • 出勤簿(タイムカード)で、労働時間を1分単位で管理できているか?
  • その時間に基づき、残業代を正しく支払っているか?
  • (従業員10名以上の場合)就業規則を作成し、労働基準監督署に届出しているか?

もし、ここが「曖昧」なら、助成金申請のプロである「社会保険労務士(社労士)」に相談し、まずこの「土台」を整備することから始めてください。

ステップ2:活用する助成金を選び、ルールブック(支給要領)を熟読する

使いたい助成金(例:キャリアアップ助成金)の、最新の「支給要領(ルールブック)」を厚生労働省のHPからダウンロードします。

「何ヶ月前に」「何を」「どうすれば」支給対象になるのか、そのルールを徹底的に読み込みます。

ステップ3:【最重要】「計画届」を事前に提出する

「落とし穴1」の復習です。

「〇月〇日から、こういう取り組み(例:正社員転換制度)を始めます」という「計画書」を、管轄の労働局やハローワークに「実行する前」に提出します。

ステップ4:計画に沿って「実行」する

計画書が受理されたら、いよいよ実行です。

(例:パートタイマーと面談し、就業規則を改訂し、正社員としての雇用契約を結び、正社員として勤務を開始させる)

この際、実行した「証拠」となる書類(雇用契約書、就業規則、面談記録など)を、すべて完璧に保管しておきます。

ステップ5:「支給申請」を行う

ルールブックに定められた期間(例:正社員化して6ヶ月分の給与を支払った後)、ついに「支給申請書」を提出します。

この時、ステップ4で保管した**「証拠書類一式」**(出勤簿、賃金台帳、雇用契約書など)を添付して、「計画通りに、間違いなく実行しました」と証明します。

ステップ6:審査 → 支給決定 → 入金!

事務局による厳格な審査(数ヶ月)が行われます。

ここで書類の不備や、計画とのズレがなければ、「支給決定通知書」が届き、後日、あなたの会社の口座に助成金が振り込まれます。

Q&A:経営者の「よくある疑問」にプロが回答

Q1. 申請は「自力」でできますか?「専門家(社労士)」に頼むべきですか?

A1. 結論、「両方」の視点が重要です。

  • 自力(DIY)のメリット:
    • 費用がかからない。
    • 申請プロセスを通じて、自社の労働環境に詳しくなれる。
  • 専門家(社労士)のメリット:
    • 圧倒的に「時間」を節約できる。(経営者様の時間は有限です)
    • 「落とし穴」を熟知しており、申請ミスによる「不支給リスク」をゼロに近づけられる。
    • ステップ1の「労働環境の整備」から丸ごと相談できる。
    • 最新の「法改正」や「新しい助成金情報」を常に入手できる。

もし御社が「助成金申請は初めて」で、「ステップ1の労働環境整備に不安がある」なら、最初は絶対にプロ(社労士)に依頼すべきです。

助成金は「ルール(法律)」そのものです。素人判断で申請し、不支給になる(数十万円を失う)リスクは、専門家への報酬(数万円〜十数万円)より遥かに高いと考えるのが、賢明な経営判断です。

Q2. 助成金をもらうと、税金はかかりますか?

A2. はい、かかります。

これは補助金も同じですが、助成金は「雑収入」として、その年の「利益(課税対象)」となります。

「50万円入ってきた!」と全額使ってしまうと、翌年の法人税(所得税)の支払いに困る可能性があります。

必ず税理士さんと共有し、納税資金を確保しておきましょう。

Q3. 助成金と補助金は、両方同時にもらえますか?

A3. はい、もらえます。

なぜなら、「目的」と「原資(予算)」が全く別だからです。

  • 助成金(厚労省):「ヒト」への投資
  • 補助金(経産省):「モノ」への投資

したがって、

「キャリアアップ助成金(助成金)をもらってAさんを正社員にしつつ、小規模事業者持持続化補助金(補助金)をもらって新しいホームページを作る」

といった「合わせ技」も全く問題ありません。

【まとめ】あなたの会社の「第一歩」は、”守り”の助成金から

「助成金」と「補助金」の違い、明確になったでしょうか?

  • 助成金(ミッション)
    • 「ヒト」が対象(雇用・研修)
    • 要件を満たせば「原則もらえる」
    • 申請の「順番」と「労働法規の遵守」が命
  • 補助金(コンテスト)
    • 「モノ・カネ」が対象(設備・IT化)
    • 審査と競争があり「落ちる」
    • 「事業計画書」の質が命

どちらも、あなたの会社を成長させる「追い風」です。

しかし、もしあなたが「どちらから手をつけるべきか」と迷っているなら、まずは「助成金」、特に「キャリアアップ助成金」の活用を検討することをお勧めします。

なぜなら、「審査で落ちる」という不確実な「攻め(補助金)」よりも先に、従業員環境を整え、確実に資金を得られる「守り(助成金)」を固めることこそが、中小企業の経営戦略の「王道」だからです。

あなたの「最初の具体的な一歩」は、

「J-Net21」で補助金を探すこと…ではありません。

「今、自社の”労働保険”や”残業代”は、100%正しく運用できているか?」

と、自社の「足元」を確認することです。

もし、そこで少しでも不安を感じたら、近所の「社会保険労務士」に相談することから始めてみてください。それが、最強の「守り」を固める第一歩となります。

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