~「なんとなく」で作るサイトは失敗する。敵を知り、自社の「勝ち筋」を見つける方法~
「今のホームページ、デザインが古いから新しくしたい」
「競合のA社がサイトをリニューアルしたらしい。うちも負けていられない」
経営者の皆様、もし今、このような動機でリニューアルを計画されているなら、少しだけ待ってください。
その「動機」は正しいですが、その「進め方」には大きな落とし穴があります。
多くの企業が、数百万円の費用をかけてリニューアルしたにもかかわらず、「見た目は綺麗になったが、売上は変わらない(むしろ下がった)」という失敗を経験しています。
なぜでしょうか?
それは、「競合分析(ライバルチェック)」を飛ばして、いきなり「デザイン」の話をしてしまったからです。
Webの世界は、残酷なほど公平な「戦場」です。
検索結果の1ページ目には、10個の椅子しか用意されていません。その椅子を巡って、御社とライバル企業は24時間戦い続けています。
敵の強さも、敵の武器も知らずに、「かっこいい鎧(デザイン)」を着込んだだけで戦場に出て行けば、どうなるでしょうか? 結果は火を見るより明らかです。
この記事では、Web集客で数々の修羅場をくぐり抜けてきた私が、「負けないための、そして勝つためのリニューアル戦略」を解説します。
デザインカタログを眺めるのは、この記事を読んだ後でも遅くはありません。
まずは、御社が戦うべきフィールドと、そこで勝つための「戦略」を一緒に練り上げましょう。
1. なぜ、デザインよりも「競合分析」が先なのか?
「リニューアルをお願いします」と制作会社に依頼すると、ダメな担当者はこう聞きます。
「どんなデザインがお好きですか? 参考サイトはありますか?」
この質問に答えてはいけません。なぜなら、Webサイトの目的は「社長の好みの絵を飾ること」ではなく、「競合他社よりも選ばれ、利益を上げること」だからです。
1-1. ユーザーは常に「比較」している
お客様が御社のサイトを見る時、必ずと言っていいほど「他社のサイト」も見ています。
タブを3つも4つも開き、「価格」「サービス内容」「信頼感」を見比べています。
その比較の中で、
「A社の方が分かりやすいな」
「B社の方が、私の悩みを分かってくれているな」
と思われた瞬間、御社のサイトは閉じられ、商機は失われます。
つまり、競合他社が何を書いているかを知らなければ、それより魅力的な提案などできるはずがないのです。
1-2. 「差別化」という名の生存戦略
もし、ライバル店が「激安」を売りにしているなら、御社が同じ土俵で「安さ」をアピールしても泥沼の価格競争になるだけです。
逆に、ライバルが「高級志向」なら、御社は「親しみやすさ」や「スピード」で勝負する隙間(ニッチ)があるかもしれません。
競合分析とは、敵を真似するためではなく、「敵がいないポジション(空いている席)」を見つけるための作業なのです。
2. 本当のライバルは「隣の店」ではない
ここで、多くの経営者様が勘違いされている重要なポイントをお伝えします。
「競合は誰ですか?」と聞くと、多くの社長が「近所の〇〇商事だよ」と、リアルな商圏でのライバル名を挙げます。
しかし、Webの世界でのライバルは違います。
「御社が狙っている『検索キーワード』で、上位に表示されているサイト」
これこそが、倒すべき真のライバルです。
検索結果=棚の取り合い
例えば、御社が新宿のジムだとします。
「新宿 ジム」で検索した時、上位に出てくるのは近所のライバル店だけではありません。
- 全国展開している大手チェーンの巨大サイト
- 「新宿のおすすめジム10選」のようなポータルサイト
- 個人のダイエットブログ
これら全てが、お客様の時間を奪い合う「競合」です。
リアルの商売敵だけを見ていては、Webという戦場では勝てないのです。
3. これだけは見ておけ!競合分析「3つの視点」
では、具体的にライバルサイトのどこを見ればいいのでしょうか?
プロが必ずチェックする3つのポイントを公開します。
視点①:【集客キーワード】何で集めているか?
ライバルサイトのタイトルや見出しを見てください。
「格安」「即日対応」「実績多数」「女性専用」…
彼らが「どんな言葉(キーワード)」を使ってお客様を呼ぼうとしているかを分析します。
もし、上位のライバル全てが「格安」を売りにしているなら、「格安」というキーワードで勝負するのは分が悪いです。あえて「高品質」や「保証付き」という別のキーワードを狙う戦略が見えてきます。
視点②:【訴求ポイント(USP)】何を強みにしているか?
トップページのメイン画像(ファーストビュー)に何が書かれているか。
- 「創業50年の信頼」
- 「リピート率90%」
- 「地域No.1の安さ」
これが彼らの「強み(USP)」です。
これらをリストアップし、「他社が言っているけれど、自社も言えること」と、「他社は言っていないけれど、自社なら言えること」を整理します。後者が、御社の「勝ち筋」になります。
視点③:【コンテンツ(中身)】どれくらい親切か?
- 料金表は分かりやすいか?
- 「お客様の声」は何件載っているか?
- スタッフの顔写真は出ているか?
- ブログの更新頻度は?
Googleは「ユーザーにとって親切なサイト」を上位に表示します。
もしライバルサイトのQ&Aが充実しているなら、御社はそれ以上に詳しいQ&Aを作らなければ勝てません。ここは徹底的に「パクる(参考にする)」のではなく、「上回る」必要があります。
4. 弱者の兵法「ランチェスター戦略」をWebに応用する
中小企業が大手に勝つための戦略、それが「ランチェスター戦略」です。
これをWebリニューアルに応用すると、次のような戦い方になります。
戦略A:一点突破(カテゴリーキラー)
「なんでも扱っています」という総合デパート型のサイトでは、Amazonや大手企業には勝てません。
「ネジの専門店」「交通事故専門の弁護士」のように、特定の分野に絞り込んだ専門サイトにします。
「〇〇のことなら、この会社が一番詳しそうだ」と思わせれば、規模の大小に関係なく、お客様は御社を選びます。
戦略B:地域密着(ローカルSEO)
商圏が決まっているビジネスなら、「地域名」での戦いに全力を注ぎます。
大手サイトは全国向けの内容しか書けません。
御社は、「〇〇駅からの詳しいアクセス動画」や「地元のイベントへの参加報告」など、地元企業にしか出せない「土着のコンテンツ」を増やすことで、地域のお客様からの信頼を総取りできます。
5. 制作会社を「分析パートナー」として選ぶ
ここまでの話で、競合分析の重要性はご理解いただけたかと思います。
しかし、これを社長一人でやるのは大変です。そこで重要なのが、制作会社選びです。
リニューアルの相談をする際、制作会社に次の質問を投げかけてみてください。
「御社は、制作前に競合調査をしてくれますか?」
ダメな制作会社の回答
「デザインの参考サイトなら、いくつかピックアップしますよ」
「基本的には、お客様の方で原稿や構成を決めていただいています」
これは「言われた通りに絵を描くだけ」の会社です。集客の結果には責任を持ってくれません。
頼れる制作会社の回答
「もちろんです。狙いたいキーワードの上位10サイトを分析し、御社が勝てるポジションをご提案します」
「競合他社と比較して、御社の強みはこの部分なので、それをトップページで強調しましょう」
このように、「作る前」の「戦略」に時間を使ってくれる会社こそが、本当のパートナーです。
費用は少し高くなるかもしれませんが、失敗するリスクを考えれば、投資対効果は圧倒的に高いはずです。
6. まとめ:リニューアルは「後出し戦略」で勝つ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
Webサイトリニューアルの極意。
それは、「後出し戦略」ができるということです。
ライバルの手(現在のサイト)は、すでにWeb上に公開されています。
彼らが「価格」を出しているのか、「技術」を出しているのか、全て丸見えです。
相手の手が見えているのですから、御社はそれに勝てる手(戦略)を用意して、リニューアルというカードを切ればいいのです。
これほど有利な戦いはありません。
もし今、「どんなデザインにしようか」と悩んでいるなら、一度その手を止めて、「ライバルは何を出しているか?」を見ることから始めてみてください。
「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」
この言葉通り、しっかりとした分析に基づいたリニューアルは、必ず御社に勝利(売上アップ)をもたらします。
御社の新しいWebサイトが、ライバルを圧倒する「最強の武器」になることを、心より応援しております。
【編集後記】
余談ですが、私が以前ご支援したある工務店の社長様は、ライバルサイトを分析した結果、「どの会社も『社長の顔』を出していない」ことに気づきました。
そこで、リニューアル時に社長の想いを語る動画をトップに置いたところ、「一番信頼できそうだったから」という理由で問い合わせが殺到しました。
勝機は意外なところに落ちているものです。ぜひ、宝探しのような気持ちで競合分析を楽しんでみてください!

