補助金で「中古品」は買える?安く設備投資したい経営者必見!対象になる条件と、絶対にやってはいけないNG購入ルート【完全解説】

目次

はじめに:「新品じゃなきゃダメ」という決まりはありません

「新しい機械を導入したいけれど、新品は高すぎて手が出ない…」

「納期が半年も待てない。中古なら即納なのに…」

「そもそも欲しいモデルが廃盤になっていて、中古市場にしか出回っていない」

経営者であるあなた(御社)が、設備投資を検討する際、このように悩むことはありませんか?

コスト意識の高い経営者様であれば、「同じ機能なら、安く買える中古品で済ませたい」と考えるのは当然のことです。

そこで気になるのが、「補助金を使って中古品を買ってもいいのか?」という点です。

国のお金(税金)を使う制度ですから、「新品のピカピカな設備じゃないと認められないのでは?」と不安に思う方も多いでしょう。

結論から申し上げます。

補助金で中古品を購入することは「可能」です。

しかし、そこには新品購入にはない「特有の厳しいルール」「高いハードル」が存在します。ここを理解せずに申請してしまうと、「安く買おうとした結果、補助金が1円も出なかった(不採択・対象外)」という最悪の結末を迎えることになります。

この記事では、数多くの補助金申請を支援してきたプロの視点から、中古品を補助金で購入するための条件、事務局を納得させるための書類作成テクニック、そして絶対に手を出してはいけない「NGな買い方」について徹底解説します。

「賢く安く、補助金をもらう」ためのバイブルとして、ぜひ最後までお読みください。


1. そもそも、なぜ「中古品」はハードルが高いのか?

まず、大前提となるルールを理解しましょう。

多くの経済産業省系補助金(ものづくり補助金、事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金など)の公募要領には、以下のように書かれています。

「中古品であっても、要件を満たせば補助対象となります」

「お!書いてあるじゃないか。なら安心だ」と思うのは早計です。

事務局(審査側)の本音を代弁すると、「中古品はトラブルの元だから、できればやめてほしい(厳しく審査しよう)」なのです。

なぜでしょうか? 理由は大きく2つあります。

理由①:「適正価格」が分からないから

新品の機械であれば、メーカーの定価や市場価格がはっきりしています。

しかし、中古品は「状態(キズ、使用年数、メンテナンス状況)」によって価格がバラバラです。

極端な話、知り合いの会社から「ボロボロの機械を、新品同様の高値で買ったことにして、補助金をだまし取る」という不正がやりやすくなってしまいます。

事務局はこれを防ぐために、価格の証明を厳しく求めます。

理由②:すぐに壊れるリスクがあるから

補助金は「事業を継続・発展させるため」の投資です。

導入して1ヶ月で壊れて動かなくなるようなポンコツ設備にお金を出すわけにはいきません。

「新品なら10年持つけど、その中古品はあと何年使えるの?」という点を証明しなければならないのです。


2. 補助金で中古品を買うための「3つの絶対条件」

では、具体的にどのような条件をクリアすれば認められるのでしょうか。

どの補助金にも共通する、鉄板の「3大条件」があります。

条件①:3社以上の「相見積もり」が取れること

ここが最大の難関です。

通常、補助金申請では「A社、B社、C社」の3社から見積もりを取り、一番安いところ(A社)に発注するというルールがあります(競争入札の原則)。

しかし、中古品は「一点モノ」です。

「製造年2018年、走行距離5万キロのトラック」と全く同じ状態のものは、世界に2つとありません。

A社にあるその中古品は、B社やC社には売っていないのです。

【対処法:同等品での比較】

この場合、他社からは「同程度の性能・年式・状態を持つ類似商品」の見積もりを取る必要があります。

  • A社(本命):型番X-100(2019年製)…100万円
  • B社(比較):型番X-100(2018年製)…110万円
  • C社(比較):型番X-200(同等スペック)…105万円

このように、「性能や機能が同等の中古品」を探してきて見積もりを揃える作業が必要です。これが非常に手間がかかります。

条件②:「選定理由書」で納得させること

なぜ新品ではなく、あえて中古品を選ぶのか?

単に「安いから」だけでは、理由として弱い(または認められない)場合があります。

事業計画書の中で、以下のようなポジティブな理由を説明する必要があります。

  • 納期の優位性: 「新品は半導体不足で納期1年だが、中古なら即納でき、来月の受注に間に合うため」
  • 希少性: 「製造中止モデルであり、当社の既存ラインと連携できるのはこの機種しかないため」
  • 費用対効果: 「新品(1,000万円)と中古(500万円)で生産能力に差がなく、投資回収期間を半減できるため」

条件③:5年以上使えるという「性能証明」

多くの補助金では、導入した設備を管理する期間(処分制限期間)が「約5年」と定められています。

そのため、「この中古品は、あと最低5年は問題なく稼働しますよ」ということを証明しなければなりません。

具体的には、販売店(中古業者)から「保証書」「性能証明書」を出してもらう必要があります。「現状渡し(ノークレーム・ノーリターン)」のようなジャンク品に近い商品は、補助金の対象外になる可能性が高いです。


3. 要注意!補助金別の「中古品」対応状況

補助金の種類によって、中古品への風当たり(厳しさ)は異なります。主要な補助金ごとの傾向を見ていきましょう。

3-1. ものづくり補助金

  • 難易度:★★★★☆(難しい)
  • 傾向: 原則OKですが、審査は厳しいです。
  • ポイント: 50万円(税抜)未満の中古品購入であれば、「2社」の相見積もりで済む場合もありますが、高額な設備投資がメインの補助金なので、厳密な「3社相見積もり」と「選定理由書」が必須になります。

3-2. 事業再構築補助金

  • 難易度:★★★★☆(難しい)
  • 傾向: こちらも原則OKです。
  • ポイント: 新規事業を行うための設備なので、「なぜあえて中古なのか?」という説明責任が強く問われます。「資金がないから中古」という後ろ向きな理由ではなく、「テストマーケティング的な要素があるため、初期投資を抑えてリスクヘッジする」といった戦略的なロジックが必要です。

3-3. 小規模事業者持続化補助金

  • 難易度:★★★☆☆(比較的通りやすい)
  • 傾向: 金額規模が小さい(最大50万〜200万円程度)ため、比較的柔軟です。
  • ポイント: 中古の厨房機器や、中古の車両(移動販売車など)での採択事例が多くあります。ただし、こちらも「相見積もり」は必須です。

3-4. IT導入補助金

  • 難易度:★★★★★(ほぼ不可能)
  • 傾向: 原則として「新品」に限られます。
  • ポイント: IT導入補助金は、登録されたITツール(ソフトウェア)を導入するものです。PCやタブレットなどのハードウェアも対象になりますが、「新品に限る」と明記されていることがほとんどです。中古のiPadなどは対象外だと考えてください。

4. これをやったら一発アウト!絶対NGな購入ルート

「中古なら何でもいい」わけではありません。

補助金の事務局が最も嫌う(=絶対に認めない)購入ルートが2つあります。ここだけは絶対に避けてください。

NGルート①:ネットオークション・フリマアプリ

「ヤフオク!」「メルカリ」「ラクマ」などで落札した商品は、原則として対象外です。

理由:

  1. 見積書が出ない: オークションは落札するまで価格が決まりません。「契約前の見積書」が存在しないため、補助金のプロセス(交付決定→発注)に乗せることができません。
  2. 相手が個人(または不明): 領収書の発行元が個人名だったり、匿名配送だったりすると、取引の実態が証明できません。
  3. 品質保証がない: 「ノークレーム・ノーリターン」が基本の世界なので、5年使える保証がありません。

どんなに安くても、オークションサイトからの購入は諦めてください。

NGルート②:個人売買(知人からの譲渡)

「知り合いの社長が廃業するから、機械を安く譲ってもらう」

これも非常によくあるケースですが、補助金申請においては超高難易度、あるいはNGです。

理由:

  1. 価格の妥当性が怪しい: 「お友達価格」なのか「裏取引」なのか、第三者が判断できません。
  2. 業として行っていない: 補助金の支払先は、原則として「その商品を販売することを業(なりわい)としている事業者」でなければなりません。たまたま機械を売りたいだけの友人Aさんは、販売業者として認められないケースが多いです。

5. 比較!「新品」vs「中古」どちらが得かシミュレーション

ここまで読んで、「中古品は手続きが面倒だな…」と思われたかもしれません。

では、経営的に見て、苦労して中古を買うのと、素直に新品を買うのと、どちらが得なのでしょうか?

ケースA:新品(1,000万円)を買う場合

  • 補助率: 2/3
  • 補助金額: 666万円
  • 自己負担額: 333万円
  • メリット: 手続きがスムーズ、メーカー保証あり、最新機能で生産性UP、減価償却で節税効果大。
  • デメリット: 自己負担額が大きい、納期がかかる。

ケースB:中古品(600万円)を買う場合

  • 補助率: 2/3
  • 補助金額: 400万円
  • 自己負担額: 200万円
  • メリット: 自己負担額が133万円安い、即納。
  • デメリット: 書類作成(相見積もり探し)に膨大な手間がかかる、故障リスク、採択リスク。

結論:プロのアドバイス

「自己負担の差額」と「事務コスト・リスク」を天秤にかけてください。

上記の例で言えば、133万円の差額のために、何日もかけて中古見積もりを探し回り、採択されるかハラハラするリスクを取る価値があるかどうかです。

もし、差額が数万円〜数十万円程度なら、迷わず「新品」をお勧めします。

逆に、半額以下で買えるような掘り出し物があるなら、苦労してでも「中古」にチャレンジする価値があります。


6. 中古品で申請するための「実践ロードマップ」

それでも「今回は中古で行く!」と決めたチャレンジャーな経営者様へ。

採択を勝ち取るための具体的な手順を伝授します。

ステップ1:欲しい中古品を「仮押さえ」する

中古品は一点モノです。申請準備をしている間に誰かに買われてしまったら終わりです。

販売店に事情を話し、「補助金申請をするので、〇月頃まで商談中としてキープできないか」交渉しましょう(※手付金を払う場合は、補助対象外になるので注意)。

ステップ2:事務局に「事前確認」をする

ここが重要です。

「この中古品を買いたいが、相見積もりが取れない。どうすればいいか?」

「比較対象はどの程度の類似品なら認められるか?」

申請する前に、補助金事務局のコールセンターに電話して確認してください。担当者の回答を記録(日時と担当者名)しておくと、後でトラブルになった時の武器になります。

ステップ3:相見積もりを「3社」集める

本命のA社以外に、B社、C社から類似品の見積もりをもらいます。

ネットの中古機械サイトなどで、条件の近い商品の販売ページを印刷し、それを「見積書代わり(価格の証明)」として使える場合もあります(※公募要領によります)。

ステップ4:選定理由書を熱く書く

事業計画書の中に、専用の項目を設けてください。

「【設備選定の理由】なぜ本中古設備なのか」という見出しを作り、安さだけでなく、納期や戦略的な意図を論理的に記述します。

ステップ5:購入後の写真を徹底的に撮る

採択後、実際に購入したら、証拠写真を撮ります。

新品同様にキレイに見えても、どこかに使用感があるはずです。

「銘板(型番)」「製造年月日」「シリアルナンバー」のアップ写真は必須です。これがないと、実は別物ではないかと疑われます。


7. まとめ:中古品活用は「上級者向け」の戦略

今回は、補助金における中古品購入について深掘り解説しました。

要点を振り返りましょう。

  1. 補助金で中古品は「買える」。 ただし、新品よりハードルが高い。
  2. 「3社以上の相見積もり」が最難関。 類似品を探す手間が必要。
  3. 「ヤフオク」「メルカリ」「個人売買」は絶対NG。
  4. 「なぜ中古か?」を論理的に説明できなければ不採択になる。
  5. 金額差が小さいなら、新品を買ったほうが無難。

補助金を使って中古品を買うことは、「事務コスト(手間)をかけて、キャッシュアウト(出費)を極限まで減らす」という、上級者向けの経営戦略です。

「面倒くさいことは嫌いだ」という方は、新品を選びましょう。

「泥臭くてもいいから、とにかく安く始めたい」という方は、ぜひ中古品での申請にチャレンジしてください。

重要なのは、申請を出してから「えっ、ダメなの?」と慌てないことです。

事前にルールを熟知し、販売店を巻き込んで書類を完璧に準備すれば、中古品でも問題なく採択されます。

もし、「自分が買おうとしている中古品が対象になるか不安だ」「相見積もりの取り方がわからない」という場合は、申請支援の専門家に相談することをお勧めします。

「これは通る」「これは危ない」という目利きができるパートナーがいれば、無駄な努力をせずに済みます。

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