補助金・助成金の「不正受給」とは?知らなかったでは済まされない注意点と、会社を守るための完全対策ガイド

目次

はじめに:「まさかウチが…」その油断が会社を潰します

「不正受給」

この言葉を聞いて、あなたはどのようなイメージを持ちますか?

ニュースで報道されるような、架空の会社を作って何億円も騙し取る詐欺グループの話だと思っていませんか?

「自分は真面目に経営しているから関係ない」

「書類のミスくらいで、そんな大げさなことにはならないだろう」

もし、ほんの少しでもそう思っているのなら、この記事はまさにあなたのためのものです。

補助金・助成金のプロとして、数多くの現場を見てきた私から、恐ろしい事実をお伝えします。

不正受給として処分されるケースの多くは、悪意のある詐欺師ではなく、「ルールを少し勘違いしていた」だけの一般的な中小企業経営者なのです。

  • 「取引先にお願いされて、日付を少しずらした」
  • 「コンサルタントに言われるがままに書類を作った」
  • 「余った予算で、別の備品も一緒に買ってしまった」

たったこれだけのことで、御社が積み上げてきた社会的信用は一瞬で地に落ち、倒産の危機に直面することさえあります。国のお金(税金・保険料)を使う以上、「知らなかった」という言い訳は一切通用しません。

この記事では、補助金・助成金の不正受給とは具体的に何を指すのか、どのようなペナルティがあるのか、そして「うっかり不正」を防ぐために経営者が確認すべきポイントを、専門用語を使わずに徹底解説します。

御社の未来と従業員を守るための「転ばぬ先の杖」として、ぜひ最後まで熟読してください。


1. どこからが犯罪?「不正受給」の定義とボーダーライン

まず、「何をやったらアウトなのか」を明確にしましょう。

事務的な「記載ミス」と「不正」の境界線はどこにあるのでしょうか。

1-1. 嘘と偽り(いつわり)はすべて「不正」

補助金・助成金は、申請した「計画書」や「申請書類」に基づいて審査され、お金が支払われます。

この書類の内容に、事実と異なることが書かれていれば、それは不正受給とみなされる可能性があります。

「少し大げさに書いただけ」

「後で帳尻を合わせるつもりだった」

経営者の心情としては軽い気持ちでも、審査側から見れば「虚偽の申請をして公金を騙し取ろうとした行為」=「詐欺」と同じ扱いです。

1-2. 故意(わざと)か過失(うっかり)かは関係ないことも

ここが非常に厳しいポイントです。

もちろん、単純な計算ミスや書き間違いであれば、修正を求められるだけで済むことが多いです。

しかし、「本来は支給されないはずの状態なのに、事実と異なる申告をしてお金を受け取った」という事実があれば、たとえ「悪気はなかった」と主張しても、不正受給として認定され、返還を求められるケースがほとんどです。

補助金申請における経営者の責任は、それほど重いものだと認識してください。


2. 実は身近にある!よくある「不正受給」の典型パターン5選

では、具体的にどのような行為が不正にあたるのでしょうか。現場でよく見かける、そして絶対にやってはいけない5つのパターンをご紹介します。

パターン①:費用の水増し(キックバック)

これは最も悪質なケースの一つです。

  • 手口: 業者に「100万円」の機械の見積もりを「150万円」で作ってもらう。補助金が出た後、業者に150万円を支払い、差額の50万円を裏で返金(キックバック)してもらう。
  • 解説: これは完全に犯罪(詐欺罪)です。業者と結託して行うケースが多いですが、発覚すれば業者も共犯として逮捕されます。

パターン②:日付の改ざん(タイムマシン発注)

補助金には必ず「この期間内に発注・納品・支払いをしてください」という厳格な期間(補助事業期間)があります。

  • 手口: 期間前にすでに契約・購入していたのに、日付を期間内に書き換えた発注書や請求書を作成する。
  • 解説: 「もう買っちゃったけど、補助金が出るなら申請しよう」という動機でやりがちですが、これも立派な文書偽造・不正受給です。

パターン③:目的外使用(流用)

「Webサイト制作」のために貰った補助金で、申請した内容とは全く違うシステムを作ったり、関係のないパソコンを大量に購入したりする行為です。

  • 解説: 補助金は「使途(使い道)」が限定されています。計画変更の承認を得ずに勝手に別のことに使うと、全額返還になります。

パターン④:架空の人件費・雇用(幽霊従業員)

主に厚生労働省系の「助成金(キャリアアップ助成金など)」で多い不正です。

  • 手口: 実際には勤務していない友人や家族の名前を借りて、タイムカードや賃金台帳を偽造し、雇用関係の助成金を受け取る。
  • 解説: 労働局の調査能力を甘く見てはいけません。タイムカードの打刻癖や、銀行口座の履歴などから必ずバレます。

パターン⑤:実態のない研修・訓練

  • 手口: 「人材開発支援助成金」などで、実際には行っていない研修を行ったように装い、日報や受講証明書を偽造する。
  • 解説: コンサルタント会社が主導して「架空の研修」を提案してくるケースがありますが、責任を問われるのは申請した御社です。

3. 会社が死ぬ!?不正受給が発覚した時の「4つのペナルティ」

「バレたらお金を返せばいいんでしょう?」

もしそう思っているなら、認識を改めてください。不正受給のペナルティは、単なる返金では済みません。「社会的制裁」が待っています。

ペナルティ①:加算金(かさんきん)の上乗せ

不正に受け取った金額を全額返還するのは当然です。それに加えて、年利10.95%〜20%程度の「加算金(延滞金のようなもの)」を上乗せして支払わなければなりません。

さらに、場合によっては受給額の20%相当額の「違約加算金」が請求されることもあります。

つまり、「もらった額よりもはるかに多い金額」を一括で払うことになります。

ペナルティ②:社名・代表者名の公表(社会的信用の失墜)

これが中小企業にとって最も致命的です。

経済産業省や厚生労働省、各都道府県のホームページに、以下の情報が掲載され、半永久的に残ります。

  • 法人名
  • 代表者名
  • 所在地
  • 不正の内容
  • 不正受給額

取引先や銀行がこれを見たらどう思うでしょうか?

「この会社は国を騙すような会社だ」と判断され、取引停止、銀行融資の打ち切り(一括返済要求)につながります。実質的に、ビジネスの世界から退場させられるのと同じです。

ペナルティ③:今後5年間の申請禁止

一度でも不正認定されると、その後5年間は、あらゆる補助金・助成金の申請ができなくなります。

さらに、代表者が新しく会社を作っても、その会社も申請できません。

ペナルティ④:刑事告発(逮捕)

悪質な場合(組織的な水増しや架空申請など)は、「詐欺罪」として警察に刑事告発されます。

実際に、経営者やコンサルタントが逮捕されるニュースは後を絶ちません。詐欺罪の最高刑は懲役10年です。


4. 「悪徳コンサルタント」の甘い言葉に要注意

ここで特に注意喚起したいのが、「不正を指南するコンサルタント」の存在です。

彼らはプロですから、言葉巧みにあなたを安心させようとします。

こんなセールストークは危険信号!

  • 「みなさんやっていますよ」
  • 「絶対にバレません」
  • 「日付だけ書き換えれば申請できます」
  • 「成功報酬が高いですが、手元にキャッシュが残るように調整(水増し)します」
  • 「面倒な書類作成は全部こちらでやります(内容は確認しなくていいです)」

責任を取るのは「あなた」です

もし不正が発覚した時、コンサルタントは「経営者の指示だった」「私は知らなかった」と逃げることがあります。あるいは、連絡が取れなくなります。

最終的に書類にハンコを押し、お金を受け取ったのは御社です。

「コンサルに言われたから」という言い訳は、お上には一切通用しません。

甘い言葉に乗せられて共犯者にならないよう、コンサルタント選びは慎重に行ってください。


5. 不正を疑われないために!経営者がやるべき自衛策

では、意図しないミスや、疑われるような事態を防ぐために、経営者は何をすべきでしょうか。

自衛策①:証拠書類(証憑)の徹底管理

補助金・助成金の基本は「証拠」です。

見積書、発注書、納品書、請求書、領収書、振込控、通帳コピー。

これら一連の書類の日付や金額が、申請内容と完全に一致しているか、常に確認してください。

また、導入した設備やシステムを使用している写真、日報なども大切に保管しましょう。

自衛策②:公募要領(ルールブック)を自分で読む

細かい字で書かれた「公募要領」を読むのは大変ですが、特に「対象経費」と「補助事業期間」のページだけでも、経営者自身が目を通してください。

「コンサル任せ」にせず、自分でもルールを把握することが最大の防御です。

自衛策③:実態のない取引は絶対にしない

「名義貸し」や「空(カラ)発注」は論外です。

ビジネスとして実態のある、真っ当な取引だけを申請してください。

自衛策④:社内チェック体制を作る

担当者一人に任せきりにすると、その担当者がミスを隠蔽したり、魔が差して不正を行ったりするリスクがあります。

必ず「申請担当」と「決裁者(社長など)」のダブルチェックを行う体制を作ってください。


6. もし「間違い」に気づいてしまったら?

「申請した後で、書類の日付ミスに気づいた」

「もしかして、あの処理はまずかったのではないか?」

万が一、受給後に不備やミスに気づいた場合はどうすればいいのでしょうか。

隠蔽(いんぺい)は最悪手

「黙っていればバレないだろう」と隠そうとするのが一番危険です。

会計検査院の実地調査などは、忘れた頃(数年後)にやってきます。その時に発覚すれば、悪質とみなされペナルティが最大化します。

「自主申告」ならペナルティは軽減される

もし間違いに気づいたら、調査が入る前に、自分から事務局へ連絡(自主申告)してください。

自主的に申し出て返還する場合、加算金が免除されたり、社名公表が見送られたりする救済措置がとられるケースがあります(※制度によります)。

「正直に言う」ことが、傷口を最小限に抑える唯一の方法です。


7. まとめ:正々堂々と申請することが、最強の経営戦略

ここまで、少し怖い話をしてきましたが、最後に大切なことをお伝えします。

補助金や助成金は、国が御社の事業成長を期待して用意してくれた素晴らしい制度です。

正しく活用すれば、設備投資を一気に進めたり、従業員の待遇を良くしたりと、会社を大きく飛躍させる起爆剤になります。

「不正受給」のリスクを避ける唯一の方法は、「嘘をつかないこと」です。

  • ルールを守る。
  • 実態のある事業を行う。
  • 正しい書類を残す。

当たり前のことを当たり前に行っていれば、何も恐れることはありません。

ビクビクしながら不正なお金を受け取るよりも、堂々と申請し、胸を張って事業拡大に取り組む方が、経営者として何倍も健全で、結果的に利益もついてくるはずです。

もし、「この処理は大丈夫かな?」「コンサルにこう言われたけど不安だ」と感じることがあれば、迷わずセカンドオピニオンを求めてください。

私のような専門家は、申請を通すだけでなく、**「御社が後で困らないようにリスク管理をする」**ことも重要な仕事です。

目先の利益に惑わされず、10年、20年と続く強い会社を作るために、クリーンな補助金活用を目指しましょう。


【補助金・助成金の適正化診断】

「今の申請内容に不備がないか不安」「信頼できる専門家に見てほしい」という経営者様へ。

弊社では、申請前の書類チェックや、採択後の事務処理サポートも行っております。コンプライアンスを遵守した安全な申請で、御社の成長をバックアップします。まずはお気軽にご相談ください。

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