補助金申請、税理士や行政書士、社労士…誰に相談すべき?あなたの「目的別」正解ルートと、失敗しない専門家選びの全知識

目次

はじめに:お医者さん選びと同じ?専門家選びを間違えると「命取り」になります

「補助金を使って設備投資をしたい」

「従業員を雇うので助成金が欲しい」

そう思い立った時、経営者であるあなた(御社)は、まず誰の顔を思い浮かべるでしょうか?

顧問税理士の先生でしょうか? ネットで見つけたコンサルタントでしょうか? それとも、知り合いの行政書士でしょうか?

実は、日本には「士業(しぎょう)」と呼ばれる専門家がたくさんいますが、彼らにはそれぞれ「得意な守備範囲」「法的にやってはいけない範囲」が明確に決められています。

これを病院に例えると分かりやすいかもしれません。

お腹が痛いのに「眼科」に行く人はいませんよね? 骨が折れているのに「内科」で手術を頼むのは危険ですよね?

補助金・助成金の世界もこれと同じです。

もし、相談する相手を間違えると、以下のような悲劇が起こります。

  • 「それは私の専門外です」とたらい回しにされる(時間の無駄)。
  • 専門外の人が無理やり申請書を書き、内容が薄くて不採択になる(機会損失)。
  • 最悪の場合、法的にNGな契約をしてしまい、後でトラブルになる。

「じゃあ、結局誰に頼めばいいの?」

その疑問に、プロの視点からズバリお答えします。

この記事では、「税理士」「社会保険労務士(社労士)」「中小企業診断士」「行政書士」という4大士業の役割の違いから、あなたの今の状況に合わせた「ベストパートナーの選び方」まで、専門用語を使わずに徹底解説します。

この記事を読み終わる頃には、あなたは迷うことなく受話器を取り、正しい専門家に相談できるようになっているはずです。


1. そもそも「補助金」と「助成金」で、頼む相手は180度違う!

専門家を選ぶ前に、絶対に知っておかなければならない「大前提」があります。

それは、「補助金(経済産業省系)」と「助成金(厚生労働省系)」は、名前は似ていても中身は全く別物だということです。

ここを混同していると、入り口から間違えてしまいます。

1-1. 厚生労働省系の「助成金」=【社会保険労務士】の独占業務

  • 主な制度: キャリアアップ助成金、雇用調整助成金、両立支援等助成金など
  • 目的: 雇用環境の整備、従業員の処遇改善
  • 財源: 雇用保険料

これらは「人(従業員)」に関する支援金です。

そして法律上、この助成金の申請代行を報酬を得て行えるのは、「社会保険労務士(社労士)」だけです。

これは「独占業務(どくせんぎょうむ)」といって、他の士業(税理士や中小企業診断士)や無資格のコンサルタントが代行することは法律で禁止されています(※本人が申請書を作成し、コンサルタントがアドバイスだけする形式ならグレーゾーンですが、実務上は社労士一択です)。

「人を雇う」「賃上げをする」「育休を取らせる」などのキーワードなら、迷わず【社会保険労務士】へ!

1-2. 経済産業省系の「補助金」=【中小企業診断士・税理士・行政書士】の得意分野

  • 主な制度: ものづくり補助金、事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金など
  • 目的: 事業の成長、設備投資、生産性向上
  • 財源: 税金

こちらは「事業(ビジネス)」に関する支援金です。

こちらは社労士のような法的な独占業務はありません。基本的には「本人(会社)」が申請するのが建前で、それを誰が支援(サポート)しても構いません。

しかし、求められるのが「高度な事業計画書(ビジネスプラン)」であるため、経営コンサルティング能力のある士業が活躍します。

「機械を買う」「新商品を開発する」「システムを入れる」などのキーワードなら、【中小企業診断士・税理士・行政書士】へ!


2. 【図解】どの士業が何を得意としているのか?徹底比較

では、経済産業省系の「補助金」を申請する場合、税理士、中小企業診断士、行政書士の誰に頼むのがベストなのでしょうか?

それぞれの特徴と「強み・弱み」を整理しました。

① 中小企業診断士(ちゅうしょうきぎょうしんだんし)

  • キャッチコピー: 「経営コンサルタントの唯一の国家資格」
  • 補助金適性: ★★★★★(最強)
  • 得意分野: ものづくり補助金、事業再構築補助金などの「難関・大型補助金」

【解説】

補助金申請のプロといえば、まずはこの資格です。彼らは「ロジカルで説得力のある事業計画書」を書く訓練を受けています。

審査員(読み手)も中小企業診断士であることが多いため、「審査員に刺さる文章」を作るのが圧倒的に上手いです。

数千万円クラスの大型補助金を狙うなら、中小企業診断士が在籍している支援機関を選ぶのが王道です。

書類作成能力は高いですが、顧問契約をしていないスポット(単発)依頼の場合、報酬が高め(着手金+成功報酬10〜15%)になる傾向があります。

② 税理士(ぜいりし)

  • キャッチコピー: 「会社のお財布を一番知っているパートナー」
  • 補助金適性: ★★★★☆(認定支援機関として必須)
  • 得意分野: 財務分析、収益計画の策定、各種証明書の発行

【解説】

多くの補助金では、申請要件として「認定経営革新等支援機関(認定支援機関)」の確認印が必要です。税理士の多くはこの認定を受けています。

普段から御社の決算書を見ているので、数字面の整合性や、資金繰りの計画を作るのが得意です。

「顧問税理士がいるなら、まずはその先生に相談する」のが第一歩です。

「税務のプロ」ですが、「文章を書くプロ」とは限りません。

「新しいビジネスの革新性」などを文章で熱く語る必要がある補助金の場合、税理士先生によっては「作文は苦手だから社長が書いてね」と言われることもあります。その場合は、中小企業診断士などとタッグを組む必要があります。

③ 行政書士(ぎょうせいしょし)

  • キャッチコピー: 「書類作成と許認可のスペシャリスト」
  • 補助金適性: ★★★☆☆(制度による)
  • 得意分野: 小規模事業者持続化補助金、自治体独自の給付金、建設業などの許認可が絡む申請

【解説】

役所に提出する書類作成のプロです。手続きの正確さ、ミスのなさはピカイチです。

特に、建設業や運送業など、許認可事業を行っている会社であれば、普段付き合いのある行政書士に依頼することで、許認可と補助金をセットで進められるメリットがあります。

【注意点】

中小企業診断士と同様、ビジネスの「戦略」を練ることは専門外の場合があります。定型的な書類作成は得意ですが、ゼロから新規事業のアイデアを膨らませるような案件は、人によって得意不得意が分かれます。


3. 「無資格のコンサルタント」や「制作会社」はどうなの?

士業以外にも、「補助金申請サポート」を謳う民間企業(株式会社〇〇コンサルティングなど)や、Web制作会社が存在します。これらはどう判断すべきでしょうか。

A. 民間コンサルティング会社

  • 特徴: 士業と提携し、チームで大量の案件を処理する。
  • メリット: スピードが早い。情報量が豊富。営業担当が熱心。
  • デメリット: 担当者の当たり外れが大きい。「営業マン」と「書類作成者」が別々で、意思疎通がうまくいかないことがある。
  • 判断基準: 実績数が豊富で、かつ「認定支援機関」のIDを自社で持っている会社なら安心です。

B. Web制作会社・システム販売会社

  • 特徴: 「IT導入補助金」の申請窓口(IT導入支援事業者)になっている。
  • メリット: ツール導入と申請をワンストップでやってくれる。
  • デメリット: 「売りたい商品ありき」なので、本当に必要な投資かどうかの判断が甘くなる。
  • 判断基準: 「IT導入補助金」を使うなら彼らにお願いするしかありません(制度上、必須パートナーだからです)。ただし、他の補助金(持続化補助金など)で「Webサイトを作りましょう」と提案された場合は、相場より高くないか注意が必要です。

4. あなたの悩みはどれ?ケース別「相談すべき相手」早見表

ここまで読んでも「まだ迷う」という方のために、具体的なシチュエーション別の「正解」をご用意しました。

ケース①:「従業員を正社員にしたい」「育休手当が欲しい」

  • 正解: 社会保険労務士(社労士)
  • 理由: 雇用関係の助成金(キャリアアップ助成金など)は社労士の独占業務だから。

ケース②:「数千万円の機械を買って、事業を大きく変えたい」

  • 正解: 中小企業診断士 または 補助金に強い認定支援機関(税理士法人など)
  • 理由: 「事業再構築補助金」や「ものづくり補助金」などの難易度が高い計画書作成が必要だから。

ケース③:「チラシを作ったり、看板を直したりしたい(予算50〜100万)」

  • 正解: 商工会議所・商工会 または 行政書士
  • 理由: 「小規模事業者持続化補助金」の領域です。地域の商工会議所に行けば、無料で指導してくれることもあります。書類作成を丸投げしたいなら行政書士へ。

ケース④:「ECサイトを作りたい」「会計ソフトを入れたい」

  • 正解: IT導入支援事業者(ITベンダー・制作会社)
  • 理由: 「IT導入補助金」は、ベンダー経由での申請が必須だから。

ケース⑤:「そもそも何が使えるか全く分からない」

  • 正解: 顧問税理士 または 地域の商工会議所
  • 理由: まずは御社の決算内容や事業規模を知っている人に「全体像」を整理してもらうのが一番です。そこから、必要に応じて専門家を紹介してもらいましょう。

5. 失敗しない専門家選び!契約前に聞くべき「3つの質問」

「よし、中小企業診断士に頼もう!」と決めても、誰でもいいわけではありません。

補助金支援は「属人性(その人のスキル)」に大きく依存します。

契約して手付金を払った後に後悔しないよう、初回の面談で必ず以下の3つを質問してください。

質問①:「私の業界(〇〇業)での採択実績はありますか?」

飲食店の申請が得意な人が、IT企業の申請も得意とは限りません。

業界特有の事情や専門用語を理解しているか、具体的な過去の事例(守秘義務の範囲内)を聞いてみましょう。

質問②:「不採択だった場合、再申請のサポートはありますか?」

補助金は水物です。プロが書いても落ちることはあります。

重要なのは「落ちた後」です。

「一度落ちたら終わり(追加料金がかかる)」なのか、「事務局からのフィードバックを分析して、次の回で無料で再チャレンジさせてくれる」のか。

後者のような「伴走型」のパートナーを選びましょう。

質問③:「採択後の『実績報告』までサポートに含まれていますか?」

これが最も重要です。

補助金は「採択」されたら終わりではありません。事業を行い、領収書を整理して報告し、検査に合格して初めて入金されます。

「申請書を書くだけ書いて、成功報酬をもらったらサヨナラ」という業者が非常に多いです。

「入金されるまで面倒を見てくれますか? その費用は見積もりに含まれていますか?」と必ず確認してください。


6. 気になる「報酬相場」の話

最後に、お金の話もクリアにしておきましょう。

専門家に依頼する場合、一般的にどのくらいの費用がかかるのでしょうか。

A. 補助金(中小企業診断士・コンサルなど)

  • 着手金: 0円 〜 15万円程度
  • 成功報酬: 採択金額の 10% 〜 15%
    • (例)1,000万円採択されたら、100万〜150万円。
  • 実績報告サポート費: 5万円 〜 10万円(成功報酬に含まれる場合もあり)

※「完全成果報酬(着手金0円)」の業者は魅力的ですが、その分成功報酬が高め(20%など)に設定されていたり、案件を選り好み(通りそうな案件しか受けない)されたりすることがあります。

B. 助成金(社労士)

  • 着手金: 0円 〜 5万円程度
  • 成功報酬: 受給金額の 15% 〜 20%
  • 顧問契約: 助成金申請は、普段の労務管理(就業規則など)が整っていることが前提となるため、月額顧問契約(2〜3万円〜)がセットになるケースが多いです。

まとめ:あなたの事業の「右腕」は誰ですか?

今回は、複雑な「補助金の相談相手」について解説しました。

要点を振り返りましょう。

  1. 「人」なら社労士、「事業」なら診断士・税理士・行政書士。
  2. 高難易度の補助金は「中小企業診断士」が最強の書き手。
  3. まずは身近な「顧問税理士」か「商工会議所」に相談するのが安全な入り口。
  4. 「採択後のサポート」までやってくれるかどうかが、良い業者の分かれ目。

補助金申請は、単なる「お金もらい」ではありません。

申請書を作成するプロセスを通じて、自社の強みを見つめ直し、これからの成長戦略を描く貴重な機会でもあります。

だからこそ、単に「代行作業」をする業者ではなく、経営者であるあなたと同じ熱量で事業の未来を考えてくれる「パートナー」を選んでください。

この記事が、御社にとって最高のパートナーと出会うための「地図」になれば幸いです。


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