「素晴らしい事業計画書を書いたはずなのに、なぜか不採択(不合格)だった…」
「ライバル企業は採択されたのに、なぜウチは落ちたんだ?」
補助金の申請結果を見て、このように肩を落とす経営者様が後を絶ちません。
何十時間もかけて書類を作り、完璧なストーリーを描いたはずなのに、なぜ結果が出なかったのか。
その原因は、もしかすると「加点項目(かてんこうもく)」の取りこぼしかもしれません。
補助金は、学校のテストとは違います。
「80点を取れば全員合格」ではなく、「点数が高い順に、予算がなくなるまで選ばれる」という、熾烈な競争(コンテスト)です。
もし、合格ラインが「75点」だった時。
あなたの事業計画書の点数が「74点」なら、不合格です。
しかし、そこで「加点項目」というボーナスポイントを「+2点」持っていたらどうでしょう?
合計「76点」となり、あなたは合格(採択)を勝ち取れます。
たった数点の差が、数百万円、数千万円の資金を得られるかどうかの運命を分けます。
そして、この「加点」は、事業計画の良し悪しとは関係なく、「知っていて、手続きさえすれば誰でも取れる」ものがほとんどなのです。
「知っているか、知らないか」
これだけで勝負が決まる残酷な世界。
この記事は、そんな補助金申請の合否を左右する「加点項目の正体と攻略法」を網羅した完全ガイドです。
- 加点項目とは具体的に何か?
- 中小企業でも簡単に取れる「おすすめの加点」は?
- 逆に、取らないほうがいい「危険な加点」とは?
専門用語を使わずに、分かりやすく解説します。
この記事を最後まで読めば、あなたはライバルに差をつける「秘密の武器」を手に入れ、自信を持って申請に臨めるようになります。
第1章:そもそも「加点項目」とは? 審査の裏側を知る
まず、補助金の審査がどのように行われているか、その「採点の仕組み」を理解しましょう。
補助金審査は「基礎点 + ボーナス点」で決まる
審査員(中小企業診断士などの専門家)は、あなたの提出した書類を読み、以下の2つの軸で点数をつけます。
- 基礎点(事業計画書の評価)
- 「この事業は実現できるか?」
- 「市場のニーズはあるか?」
- 「革新的なアイデアか?」といった、ビジネスの中身そのものに対する点数です。これは、時間をかけて練り上げる必要があります。
- 加点(政策的なボーナス)
- 「賃上げをする約束をした」
- 「国の推奨する認証制度を取得した」
- 「環境に配慮した経営をしている」といった、「国がやってほしいこと」に協力する姿勢に対するボーナス点です。
なぜ「加点」が必要なのか?
国には、「日本経済をこうしたい」という政策目標があります。
(例:お給料を上げてほしい、デジタル化を進めてほしい、災害に強い会社を増やしたい)
そこで、補助金を「餌(インセンティブ)」にして、企業を誘導しようとします。
「賃上げしてくれる会社には、ハンデ(加点)をあげるよ!」
「防災計画を作った会社は、優先的に合格させるよ!」
つまり、加点項目とは「国の政策への協力ポイント」なのです。
これを積極的に取りに行く姿勢を見せることで、あなたの会社は「国の良きパートナー」とみなされ、採択率がグンと上がります。
第2章:まずはこれだけ!中小企業が狙うべき「3大・基本加点」
加点項目は、補助金の種類(ものづくり補助金、IT導入補助金など)によって数十種類ありますが、「どの中小企業でも狙いやすく、効果が高い」鉄板の3つを紹介します。
まずは、この3つをクリアできるか検討してください。
① 【賃上げ加点】(難易度:中~高)
今の政府が最も力を入れている項目です。
「事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+30円以上にする」
「給与支給総額を年率1.5%〜3%以上アップさせる」
といった計画を表明することで、大きな加点が得られます。
- メリット: 配点が非常に高い。採択に直結する。
- 注意点: 一度約束すると、絶対に守らなければなりません。守れないと補助金の返還を求められるリスクがあります。
② 【パートナーシップ構築宣言】(難易度:低・おすすめ!)
「下請けイジメをしません」「取引先と良好な関係を築きます」という宣言を、専用のポータルサイトで行うものです。
- メリット: ネット上で宣言するだけなので、費用もかからず、手間も少ない。「コスパ最強」の加点です。
- 注意点: 宣言をしてから「登録」されるまでに数日〜数週間かかる場合があります。締切直前だと間に合いません。
③ 【経営力向上計画】(難易度:中)
「自社の経営力を高めるための計画(人材育成、財務管理など)」を作成し、国の認定を受けるものです。
- メリット: 加点になるだけでなく、「税制優遇(即時償却など)」や「金融支援」も受けられるようになります。一石二鳥の制度です。
- 注意点: 認定までに1ヶ月程度かかります。早めの準備が必要です。
第3章:実は簡単?「パートナーシップ構築宣言」の取り方
「加点項目って難しそう…」と身構えているあなたへ。
一番簡単で、多くの補助金(ものづくり補助金、事業再構築補助金など)で使える「パートナーシップ構築宣言」について、具体的に解説します。
これは、取らないと損と言えるレベルのものです。
何をするの?
専用のWebサイトで、ひな形に沿って「私の会社は、取引先と共存共栄の関係を築きます」という宣言文を作り、アップロードするだけです。
手順はこれだけ
- 「パートナーシップ構築宣言」のポータルサイトにアクセス。
- 「ひな形(Wordなど)」をダウンロードし、会社名や代表者名を入力。
- いくつかのチェック項目(価格交渉に応じます、など)にチェックを入れる。
- PDFにしてアップロードし、申請ボタンを押す。
これだけで、数日後に公表され、加点の権利を得られます。
費用は0円。所要時間は30分〜1時間程度。
これで採択率が上がるなら、やらない理由はありませんよね?
第4章:最強の武器だが「諸刃の剣」?賃上げ加点のリアル
次に、最も配点が高いけれど、最もリスクがある「賃上げ加点」について深掘りします。
2025年現在、この加点の有無が勝敗を分けると言っても過言ではありません。
覚悟が必要な理由
多くの補助金では、賃上げ加点を申請し、採択された場合、「未達成時のペナルティ」が設定されています。
例えば、「給料を毎年1.5%上げます」と約束して採択されたのに、業績が悪くて上げられなかった場合。
「補助金の一部(または全部)を返還してください」
という、恐ろしい命令が下ることがあります。
判断基準
- GO: もともと賃上げをする予定だった。
- 業績が伸びており、人手不足解消のために給料を上げる必要がある。
- STOP:
- 今の給料を払うので精一杯。
- 「加点が欲しいから」という理由だけで、無理な数字を約束しようとしている。
「加点が欲しいから無理な約束をする」のは、経営として本末転倒です。
税理士や社労士と相談し、「本当に達成可能な数字か?」をシミュレーションしてからチェックを入れてください。
第5章:他にもある!状況別・狙い目の加点リスト
基本の3つ以外にも、御社の状況によっては「あ、これならいける!」という項目があるかもしれません。
1. 【地域・社会貢献】系の加点
- 事業継続力強化計画(防災認定):「地震や台風が来た時に、どう事業を続けるか」というBCP(事業継続計画)を作り、認定を受けるもの。災害対策にもなり、おすすめです。
- 健康経営優良法人:「従業員の健康管理(定期検診、ストレスチェックなど)」に力を入れている企業としての認定。ホワイト企業アピールにもなります。
2. 【女性・若者活躍】系の加点
- えるぼし認定・くるみん認定:女性の活躍推進や、子育てサポート企業としての認定。取得難易度は少し高いですが、採用ブランディングに大きく貢献します。
3. 【デジタル・環境】系の加点
- DX認定: デジタル技術を活用した経営ビジョンを策定し、認定を受ける。
- カーボンニュートラル枠(省エネ): 脱炭素に向けた取り組みを行う場合に加点、または専用枠で申請可能。
第6章:加点を取りに行く「スケジュール」の罠
ここで、最大の注意点をお伝えします。
それは、「加点は、取得に時間がかかる」ということです。
締切1週間前では手遅れ
「事業計画書が書き終わった! さあ、加点も申請しよう」
締切の3日前にこう思っても、間に合いません。
- パートナーシップ構築宣言: 登録完了まで数日〜2週間
- 経営力向上計画: 認定まで約1ヶ月〜1.5ヶ月
- 事業継続力強化計画: 認定まで約1.5ヶ月
多くの加点項目は、申請時点(締切日時点)で「認定済みであること」や「申請受理済みであること」が条件となります。
正しいスケジュール
補助金の申請を決めたら、事業計画書を書くのと同時より、先に「先行して」加点項目の申請手続きを始めてください。
- GビズID取得(最初の一歩)
- 加点項目の洗い出し(どれを取るか決める)
- 加点項目の申請手続き(認定待ちの間に計画書を書く)
- 事業計画書の作成
- 補助金本申請
この順番で進めるのが、勝利への鉄則です。
第7章:よくある質問(Q&A)
Q1. 加点は多ければ多いほど良いですか?
A1. 基本的にはYESですが、コストパフォーマンスを考えてください。
すべての加点を取ろうとすると、膨大な事務作業が発生し、本業がおろそかになります。「パートナーシップ構築宣言」や「賃上げ」など、効果が大きく手間が見合うものに絞るのが賢明です。
Q2. どの加点が一番効果がありますか?
A2. 「賃上げ」です。
国の方針に直結するため、配点が最も高い傾向にあります。ただし、前述の通りリスクも最大ですので、慎重な判断が必要です。
Q3. 専門家に頼めば、加点申請もやってくれますか?
A3. 多くの場合は「別料金」または「サポート範囲外」です。
事業計画書の作成サポートとは別に、例えば「経営力向上計画」の策定には別途費用(数万円〜十数万円)がかかるのが一般的です。
「パートナーシップ構築宣言」のような簡単なものは、自分でやることをお勧めします。
まとめ:加点は「熱意」の証明。1点をもぎ取れ!
「加点項目」について解説してきました。
- 補助金は「点数勝負のコンテスト」である。
- 加点は、事業計画とは別の「ボーナスポイント」。
- 「パートナーシップ構築宣言」はコスパ最強。
- 「賃上げ」は最強だが、リスク管理が必要。
- 「時間」がかかるので、真っ先に着手する。
採択率40%の補助金があったとして、
「何もしないで40%の運にかける経営者」と、
「加点を積み上げて、合格率を60%、70%に高める経営者」。
国(審査員)が、どちらにお金を託したいと思うかは明白ですよね。
加点項目を申請するという行為は、単に点数を稼ぐだけでなく、
「ウチの会社は、国の政策を理解し、真剣に経営を良くしようとしています!」
という「熱意」と「経営能力」の証明でもあります。
面倒くさがらず、取れる加点はすべて取りに行きましょう。
その「あと1点」への執念が、御社の採択を決定づけ、事業を飛躍させる資金を引き寄せます。
まずは、今すぐブラウザを開き、
「パートナーシップ構築宣言 ポータルサイト」
を検索してみてください。
その小さなアクションが、採択への大きな一歩になります。
御社の申請が実を結び、見事採択されることを心より応援しております。

