補助金申請書、どのくらいのボリュームで書けばいい?審査員の心を掴む「黄金の枚数」と「密度の法則」

「事業計画書を作成してくださいと言われたけれど、一体どれくらい書けばいいの?」

「A4用紙1枚で簡潔にまとめるべき? それとも論文のようにビッシリ書くべき?」

補助金の申請を目の前にして、パソコンの白い画面を前にフリーズしてしまっている経営者の皆様。そのお気持ち、痛いほどよく分かります。

普段の業務で忙しい中、慣れない書類作成に取り組むのは大変なストレスですよね。「書きすぎて審査員に『読むのが面倒だ』と思われたらどうしよう」「逆に短すぎて『やる気がない』と判断されたら……」と、疑心暗鬼になってしまうのも無理はありません。

結論から申し上げます。

「補助金申請書に、万人に共通する『正解の枚数』はありません。しかし、『採択されるための黄金比率』は存在します」。

少なすぎれば熱意が伝わらず、多すぎれば要点がぼやける。この絶妙なバランスをどう取るか。ここが、採択と不採択を分ける分水嶺(ぶんすいれい)になります。

この記事では、数多くの申請書を見てきたプロの視点から、「各補助金における適切なボリューム感」と、「文字数を埋めるためのテクニック」、そして「審査員が思わず読みたくなる文章構成」について徹底解説します。

これを読み終える頃には、あなたの手元にある真っ白なファイルが、採択を勝ち取るための設計図へと変わるヒントが得られているはずです。


目次

1. そもそも、なぜ「ボリューム」が重要なのか?

「中身が良ければ、短くても伝わるはずだ」

「ビジネス文書は簡潔さが命だろう」

そう思われる方もいるかもしれません。確かに、一般的なビジネスメールや報告書では「簡潔さ」が正義です。しかし、補助金申請においては、その常識が少しだけ変わります。

審査員は「あなたの会社」を全く知らない

まず前提として、審査員はあなたの会社のことを1ミリも知りません。あなたがどれだけ素晴らしい技術を持っていても、どれだけ地域で愛されていても、申請書に書かれていなければ「存在しない」のと同じです。

審査員は、あなたが提出した書類だけを見て、数千万円という税金を投入すべきかを判断しなければなりません。

その判断材料として、「A4用紙1枚の箇条書き」だけで十分でしょうか?

「この会社は市場をどう分析しているのか?」

「競合他社に勝てる根拠は?」

「資金繰りは大丈夫か?」

これらを「初対面の第三者が、一度読んだだけで腹落ちするレベル」まで丁寧に説明しようとすれば、必然的にある程度のボリュームが必要になるのです。

「枚数制限」は「期待値」である

多くの補助金には、事業計画書の枚数制限(上限)が設けられています。

例えば、「最大15ページまで」と書かれていたとします。

ここで「じゃあ、5ページで簡潔にまとめよう」と考えるのは危険です。

審査員心理としては、「15ページまで書いていいと言っているのに、5ページしか書いてこないということは、アピールすることがない(=事業の具体性がない)か、熱意が足りないのではないか?」と受け取られかねないからです。

プロの鉄則として、「上限枚数の7〜8割以上は埋める」ことを推奨しています。これが、採択へのスタートラインです。


2. 主要補助金別:目指すべき「最適ページ数」はこれだ!

では、具体的にどのくらいの枚数を目指せばいいのでしょうか。人気の補助金を例に、プロが考える「合格ラインのボリューム感」を提示します。

※あくまで目安であり、年度や公募回によって規定が変わるため、必ず最新の公募要領を確認してください。

① 小規模事業者持続化補助金(一般枠など)

  • 規定: 様式全体で数枚程度(経営計画書・補助事業計画書)
  • プロの推奨ボリューム: A4で5枚〜8枚

かつては2〜3枚でも採択されることがありましたが、近年は競争率が上がっています。

「自社の強み」「市場動向」「今回の取り組み」「効果」をしっかりと記述し、写真や図表を入れると、自然と5枚以上にはなるはずです。

8枚を超えると読み手が疲れる可能性がありますが、スカスカの2枚よりは、充実した8枚の方が圧倒的に有利です。

② ものづくり補助金

  • 規定: その他の資料を除き、事業計画書本体でA4サイズ10ページ以内
  • プロの推奨ボリューム: 9ページ〜10ページ(上限ギリギリ)

これは「ものづくり」に関わる革新的な事業計画を問うものです。技術的な優位性や開発プロセスを詳細に書く必要があるため、10ページの上限いっぱいに書くのがセオリーです。

もし5〜6ページで終わってしまったなら、「書き込み不足」を疑ってください。技術的な図解や、開発スケジュールのガントチャートなどを入れ込み、密度を高めましょう。

③ 事業再構築補助金

  • 規定: A4サイズ15ページ以内(補助金額1,500万円以下の場合は10ページ以内)
  • プロの推奨ボリューム: 13〜15ページ(上限の9割以上)

補助金額が大きく、審査も厳格です。

「なぜ今の事業ではダメなのか(事業再構築の必要性)」から始まり、「新市場の分析」「競合優位性」「収支計画」まで、網羅すべき項目が多岐にわたります。

文字だけで15ページ埋めるのは苦行ですが、グラフや写真を効果的に使えば、15ページは決して多すぎる量ではありません。「説得力を積み重ねたら、結果的に15ページになった」という状態が理想です。

④ IT導入補助金

  • 特徴: 基本的にはWebフォームへの入力形式
  • ボリューム感: 文字数制限の8割以上

IT導入補助金は、Wordファイルを作るのではなく、専用サイトでの入力がメインです。各項目に「255文字以内」などの制限があります。

ここでも、「一言二言で終わらせない」ことが重要です。制限文字数の8割〜9割を使って、具体的に記述してください。


3. 「文字数が増やせない!」を解決する3つのボリュームアップ術

「10ページも書くことがない……」

「文章を書くのが苦手で、どうしても短くなってしまう」

そんな悩みを持つ方へ、中身を薄めずに(水増しせずに)、正当にボリュームを増やすテクニックを伝授します。

テクニック①:「ビジュアル」で紙面を占有する

文字だけで埋めようとしてはいけません。審査員にとっても、文字だけの書類は読みづらいものです。

  • 写真: 現在の店舗の外観、古い設備、試作品、改装イメージ図。
  • 図解: 業務フロー図、組織図、サービスの提供体制図。
  • グラフ: 売上の推移、商圏の人口推移、アンケート結果。

「百聞は一見に如かず」です。写真を1枚貼り、その下にキャプション(説明文)を3行入れるだけで、A4用紙の1/4〜1/3は埋まります。しかも、分かりやすさが格段にアップします。これは手抜きではなく、**「読み手への配慮」**です。

テクニック②:SWOT分析を「表」で見せる

事業計画書の定番フレームワーク「SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)」。

これを文章でダラダラ書くのではなく、「表」にして掲載しましょう。

表にすることでスペースを使えますし、論理的に整理されている印象を与えます。さらに、その表の下に「クロスSWOT分析(強み×機会=積極戦略)」の解説文章を加えることで、内容の厚みと物理的なボリュームの両方を確保できます。

テクニック③:「5W1H」で具体化する

文章が短い人の特徴は、「抽象的」であることです。

例えば、「Web広告を出して集客する」という一文。これでは1行です。

これを5W1Hで分解してみましょう。

  • Who(誰に): 30代〜40代の子育て世代の主婦層をターゲットに
  • Where(どこで): 半径5km以内のエリアに絞って、InstagramとGoogleマップ広告を活用し
  • What(何を): 当店独自の「無添加・オーガニック」という強みを訴求するバナー画像を配信し
  • How(どのように): 月額3万円の予算で3ヶ月間運用し、A/Bテストを繰り返しながらクリック率を高め
  • Why(なぜ): 競合店はチラシ集客がメインであり、Webでの認知獲得に空白地帯があるため

いかがでしょうか。たった1行が、説得力のある5〜6行の文章に生まれ変わりました。

「具体的に書く」ことは、ボリュームアップと採択率アップの一石二鳥の効果があります。


4. 審査員はここを見ている!「読みやすい」ボリュームの作り方

ボリュームを増やすといっても、ただ文字を詰め込めばいいわけではありません。

審査員は、短期間に膨大な量の申請書を読みます。疲れています。

そんな審査員が「おっ、この申請書は読みやすいな」と感じる工夫が必要です。

① 余白と行間は「心の余裕」

ギチギチに文字が詰まった書類は、見るだけで拒絶反応を起こされます。

  • フォントサイズ: 10.5pt〜11ptが標準。高齢の審査員もいるため、小さすぎはNG。
  • 行間: 適度な行間を空ける(Wordの行間設定1.1〜1.2倍程度)。
  • 余白: 上下左右に十分な余白を取る。

適切な余白は、文章を読みやすくし、「整理された計画」という印象を与えます。結果的にページ数も稼げます。

② 見出し(ヘッダー)を階層化する

大見出し、中見出し、小見出しを使い分け、構造を明確にします。

  • 1. 補助事業の概要
    • 1-1. 背景と動機
      • (1) 市場の変化について

このように階層化し、見出しを太字やゴシック体にするだけで、スキャン(拾い読み)しやすくなります。審査員はまず見出しだけを見て全体像を把握しようとするので、見出しだけでストーリーが伝わるのが理想です。

③ 重要な箇所は「太字」や「下線」で強調

すべてを読んでもらえると思ってはいけません。

「ここだけは絶対に伝えたい!」というキーワードや数字(売上目標、利益率など)は、太字や<u>下線</u>、あるいは<span style=”background-color: yellow;”>マーカー</span>のような装飾を使って強調しましょう。

(※ただし、色の使いすぎはチカチカするので注意。基本はモノクロ印刷でも分かる強調が安全です)


5. 書くことが見つからない時の「深掘り質問リスト」

どうしても筆が進まないあなたへ。

以下の質問に答える形でメモを取ってみてください。それがそのまま、申請書の「本文」になります。

【現状分析・強み】

  • お客さんは、なぜ他のお店ではなく、あなたのお店に来てくれるのですか?
  • あなたの会社が「絶対にこれだけは負けない」というこだわりは何ですか?
  • 過去に一番感謝されたエピソードは?

【市場・顧客】

  • 最近、お客さんの悩みや要望で「変わってきたな」と思うことは?
  • ライバル店が増えていますか? 減っていますか? その理由は?

【事業内容】

  • 補助金で導入する機械は、具体的に何ができますか?(スペック、速度、精度)
  • それを導入すると、あなたの仕事はどう楽になりますか? お客さんはどう喜びますか?

【効果】

  • その事業が成功したら、3年後の売上はどうなっていますか?
  • その根拠(計算式)は?(例:客単価〇円 × 客数〇人 = 〇円)

これらを文章で繋ぎ合わせれば、立派な事業計画書の骨子が完成します。


6. まとめ:ボリュームは「熱意の質量」である

ここまで、補助金申請書のボリュームについて解説してきました。

ポイントを振り返りましょう。

  1. 正解の枚数はないが、「規定枚数の7〜8割以上」が合格ライン。
  2. 文字だけで埋めるな。写真、図、グラフを使って「視覚的ボリューム」を出す。
  3. 審査員への「読みやすさ」への配慮(余白、見出し)が、結果的にページ数を適正化する。
  4. 「具体性(5W1H)」を持って書けば、自然と文章量は増える。

申請書の作成は、確かに大変な作業です。「面倒くさい」と感じることもあるでしょう。

しかし、こう考えてみてください。

「この数ページ、数千文字を書くことで、数百万円、数千万円の資金が得られるかもしれない」

時給換算すれば、これほど割の良い仕事は他にありません。

そして何より、自社の強みや未来について深く考え、言語化してまとめたその書類は、補助金の採択・不採択に関わらず、今後の経営の羅針盤(コンパス)として必ずあなたの役に立ちます。

白いページを恐れる必要はありません。

まずは箇条書きから。まずは写真の貼り付けから。

あなたの頭の中にある「熱意」を、少しずつ形にしていきましょう。

どうしても書けない、時間がない方へ

「理屈は分かったけれど、やっぱり文章を書くのが苦手だ」

「本業が忙しすぎて、10ページも書く時間なんて物理的にない」

そんな時は、無理をせず「プロの手を借りる」のも立派な経営判断です。

認定支援機関や補助金コンサルタントは、あなたの頭の中にある構想をヒアリングし、それを審査員に響く「採択される文章」へと変換するプロフェッショナルです。

苦手なことはプロに任せ、あなたは本業の売上アップに専念する。

そうやって効率的に補助金を獲得し、事業を加速させている経営者様もたくさんいらっしゃいます。

自分で書くか、プロに頼むか。

どちらの道を選ぶにせよ、まずは「申請する」という一歩を踏み出すことが、未来を変えるきっかけになります。

あなたの挑戦が、最高の結果(採択)に繋がることを心より応援しています。

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