隠れたコストに注意!ホームページ公開後に発生する「運用費用」の内訳

目次

~「作って終わり」では済まないWebの世界。毎月の請求書に納得するための「費用の解剖図」~

「やっとホームページが完成した!これで一安心だ」

そう思ったのも束の間、翌月から制作会社から届く「保守費用」や「管理費」と書かれた請求書。

「あれ? 制作費は全額払ったはずなのに、なぜ毎月お金がかかるんだ?」

「何も更新していない月でも請求が来る。これって、ただの搾取じゃないのか?」

経営者の皆様。制作会社との契約時に、このようなモヤモヤを感じたことはありませんか?

あるいは、これから契約しようとしている見積書の中に、「月額費用」という項目を見つけて、首を傾げていませんか?

その感覚は、経営者として非常に真っ当です。

目に見える「モノ」がないのに、お金だけが出ていくのは納得がいかないでしょう。

しかし、Web制作のプロとして、はっきり申し上げます。

ホームページは「家」と同じです。建てた後も、「維持費」と「修繕費」がかかります。

家を建てても、固定資産税や光熱費、外壁の塗り直し費用がかかるように、Webサイトも公開した瞬間から「維持するためのコスト」が発生します。

問題なのは、多くの制作会社が契約時にこの説明を曖昧にし、後になって「それは別料金です」と言い出すケースが多いことです。

この記事では、ホームページ公開後に発生する「運用費用」の正体を、ブラックボックスを開けるように一つひとつ分解して解説します。

この記事を読めば、「何が必須の経費で、何が無駄な経費なのか」が明確になり、制作会社と対等に渡り合える知識が身につきます。

後から「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために。ぜひ最後までお付き合いください。


1. なぜ、公開後にお金がかかるのか?(Webサイト=持ち家理論)

まずは全体像を掴みましょう。運用費用は大きく分けて3つの階層(レベル)に分かれます。

これを理解していないと、「全部無駄金」に見えてしまいます。

  • レベル1:インフラ費用(土地・住所代) … 絶対に払わないとサイトが消える。
  • レベル2:保守・セキュリティ費用(警備・保険代) … 払わないと事故のリスクがある。
  • レベル3:更新・運用費用(リフォーム・広告代) … 払うかどうかは経営判断(攻めの費用)。

多くのトラブルは、この3つをごちゃ混ぜにして考えてしまうことから起こります。

それぞれ詳しく見ていきましょう。


2. 【レベル1】インフラ費用:これがないとサイトは消滅する

これは「必要経費」です。誰に依頼しようが、自作しようが、必ず発生します。

① サーバー費用(土地代)

Webサイトのデータを置いておく場所代です。

  • 相場: 月額 1,000円 ~ 5,000円程度(スペックによる)
  • 注意点: 格安(月数百円)のサーバーは、アクセスが集中すると落ちたり、表示が遅かったりします。ビジネス用なら、ある程度のスペック(Xserverなど)が必要です。

② ドメイン費用(住所代)

「〇〇.com」や「〇〇.co.jp」といったURLの使用料です。

  • 相場: 年額 1,500円 ~ 5,000円程度
  • 注意点: 年に一度の更新を忘れると、ある日突然サイトが見られなくなります。 過去にこれでWebサイトを失った企業を何社も見てきました。

③ SSLサーバー証明書費用(鍵代)

通信を暗号化し、セキュリティ警告を出さないための費用です。

  • 相場: 無料 ~ 年額数万円
  • 注意点: 最近は無料のSSLでも十分な機能がありますが、企業の実在証明ができる有料SSLを勧める制作会社もあります。どちらが必要か確認しましょう。

3. 【レベル2】保守・セキュリティ費用:見えない「安心」を買う

ここが一番「無駄じゃないか?」と思われがちな部分です。

「何も壊れていないのに、なぜお金を払うのか?」

しかし、ここは「何も壊れないようにするために払うお金」なのです。

④ システム(CMS)保守費用

現在のWebサイトの多くは「WordPress(ワードプレス)」というシステムで作られています。

これはスマホのOSと同じで、頻繁にアップデートが必要です。

放置するとどうなるか? ウイルスに感染し、サイトが改ざんされたり、お客様にスパムメールをばら撒く踏み台にされたりします。

  • 内容: システムのバージョンアップ、プラグインの更新、動作確認。
  • 相場: 月額 5,000円 ~ 2万円

⑤ バックアップ費用

操作ミスでデータを消してしまったり、ハッキングされたりした時に、サイトを復元するための保険です。

「データが消えたので復旧してください」と泣きつかれても、バックアップ契約がなければ、制作会社は何もできません(また100万円かけて作り直しです)。

⑥ 死活監視・緊急対応費

「日曜日の夜中にサイトが落ちた!」

そんな時に、自動で検知し、エンジニアが復旧作業にあたるための待機費用です。

24時間365日止まってはいけないサイト(ECサイトなど)では必須です。


4. 【レベル3】更新・運用費用:サイトを育てる「攻め」の投資

ここからは「守り」ではなく「攻め」の費用です。

サイトを集客装置として機能させるためには、ここへの投資が不可欠です。

⑦ 都度更新・修正費用

「お知らせを載せたい」「社員紹介の写真を替えたい」「文章を直したい」

こうした作業を制作会社に依頼する場合の費用です。

  • スポット依頼: 1回 5,000円 ~数万円(割高になりがち)
  • 定額プラン: 月額 2万円で修正し放題(など)

プロのアドバイス:

頻繁に更新するなら、WordPressなどの「自社で更新できるシステム」を最初に入れておき、この費用をゼロにするのが賢い戦略です。

⑧ アクセス解析・レポート費用

「今月は何人来て、どのページが見られたか」を分析し、レポートしてもらう費用です。

ただ数字を羅列しただけのレポートなら不要ですが、「ここを直せばもっと売れますよ」という「改善提案」があるなら、払う価値は大いにあります。

  • 相場: 月額 1万円 ~ 5万円

⑨ Web広告費・SEOコンサル費

より積極的に集客するための広告費や、専門家のアドバイス料です。

これは「経費」ではなく、売上を作るための「投資」として捉えるべき項目です。


5. 「自社管理」vs「制作会社にお任せ」どっちが得?

ここまで読んで、「サーバー代とかドメイン代って、自分で払えばもっと安いんじゃないの?」と思った勘の鋭い経営者様。

その通りです。原価はもっと安いです。

制作会社が提示する月額費用には、必ず「管理手数料(マージン)」が乗っています。

では、自分で管理(自社契約)した方が得なのでしょうか?

自社管理(DIY)のメリット・デメリット

  • メリット: とにかく安い。月額1,000円~2,000円で済む。
  • デメリット:
    • 全責任が自分にある。
    • ドメイン更新メールを見逃してサイト消滅(本当によくあります)。
    • サーバー設定ミスでメールが届かなくなる。
    • ウイルス感染しても誰も助けてくれない。
    • 社長の貴重な時間が、トラブル対応で潰れる。

制作会社にお任せのメリット・デメリット

  • メリット: 面倒な手続き、トラブル対応を全て丸投げできる。「安心」が手に入る。
  • デメリット: 割高になる(月額1万円~)。

結論:

社内に詳しいIT担当者がいるなら「自社管理」でOKです。

しかし、社長一人でやっている、あるいはITに詳しくないなら、「月額数千円~1万円程度の安心料」は、必要経費として割り切ってプロに任せることを強くお勧めします。

トラブルが起きた時の社長の時給を考えれば、その方が圧倒的に安上がりだからです。


6. 契約前にチェック!「悪質業者」を見抜く3つのポイント

最後に、運用費用にまつわるトラブルを避けるためのチェックポイントをお伝えします。

① 「サーバー・ドメインの名義」は誰か?

制作会社名義で契約されていると、「解約したらドメイン(URL)は返しません」と言われるリスクがあります。

管理は任せても、「名義(権利)」は必ず御社になるように契約してください。

② 「作業範囲」は明確か?

「月額管理費 1万円」の中に、修正作業は含まれているのか?

「月3回までのテキスト修正は無料」など、具体的な作業範囲が契約書に書かれているか確認してください。「管理費を払っているのに、修正は別料金と言われた」というトラブルが一番多いです。

③ 契約期間と解約金

「月額費用が安いと思ったら、5年リース契約で解約できない仕組みだった」

これは最悪のパターンです。Webの世界は変化が早いです。「1年ごとの更新」または「1ヶ月ごとの解約可能」な契約を選びましょう。


7. まとめ:見えないコストを「可視化」すれば怖くない

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

ホームページの運用費用について、霧が晴れてきましたでしょうか?

  • インフラ費用は、家賃と同じく必須。
  • 保守費用は、保険と同じく「万が一」への備え。
  • 更新費用は、自社でやるかプロに頼むかの経営判断。

「月額費用がかかる」こと自体は悪ではありません。

問題なのは、「何にお金を払っているのか分からない状態」です。

見積もりを見る際は、合計金額だけでなく、

「この月額費用には、セキュリティ対策も含まれていますか?」

「もしサーバーが落ちたら、復旧してくれますか?」

と、担当者に質問をぶつけてみてください。

そこで明確に答えられる会社なら、その費用は正当な対価であり、御社のWebサイトを長く守ってくれる頼もしいパートナーになるはずです。

「安さ」だけで選んで、後から高額な修理費を払うことのないように。

賢い経営者として、「安心」と「安全」に適正なコストをかける判断をしていただければと思います。

御社のWeb戦略が、強固な基盤の上で大きく成長することを応援しております。


【編集後記】

余談ですが、私が以前相談を受けたお客様で、「月額管理費0円」の業者で作ったサイトがハッキングされ、復旧不能になったケースがありました。

そのお客様は結局、別の会社で一から作り直すことになり、「最初から月々5,000円払っておけば、こんなことには…」と悔やんでおられました。

「タダより高いものはない」。Webの世界でも、これは真実です。

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